シンポジウム
「少年事件に国選はつかないの?〜国選付添人制度の全面的実現を目指して」開催される
子どもの権利特別委員会 委員
服 部 朗
3月19日、日本弁護士連合会・中部弁護士会連合会・当会の共催によるシンポジウム「少年事件に国選はつかないの?〜国選付添人制度の全面的実現を目指して」が中区役所ホールで開かれた。
2009年5月から被疑者国選が必要的弁護事件に拡大され、少年の被疑者にも国選弁護人が多く付されることになった。しかし、現在、国選付添人制度の対象事件は極めて限られているため、被疑者段階では弁護士の援助を受けられても、家裁送致された途端、弁護士の援助が受けられなくなる「置き去り」の少年が生み出されている。こうした状況に対し、日弁連は「全面的国選付添人制度に関する当面の立法提言」を発表するなどして付添人活動の拡充を要請している。今回のシンポは、かかる活動の一環として行われた。
シンポ第1部では、須納瀬学弁護士(東京弁護士会、日弁連全面的国選付添人制度実現本部事務局長)の講演「少年事件にもえん罪はある!」が行われた。須納瀬弁護士は、綾瀬母子殺人少年えん罪事件の子どもの人権弁護団の1人として、警察の強引な捜査、少年たちの自白までのいきさつ、無罪の証拠の発見など、事件の経過を紹介しながら、なぜ少年事件でえん罪が生まれるのかについて講演された。その原因は、警察の見込み捜査、自白依存の体質など、成人のえん罪事件と共通する点もあるが、加えて少年は、知識が乏しく、被暗示性が高いため、迎合的に虚偽の供述をしてしまう傾向が強い。こうした少年期の特性に心を向けなければ、えん罪を見逃してしまうおそれがある。須納瀬弁護士は、綾瀬事件のご経験を通じて、少年事件だからこそ、えん罪は起こりやすいことを聴衆に訴えられた。
シンポ第2部では、はぐるま太鼓が会場に響きわたった。福井県越前市にある「はぐるまの家」は、不登校、家庭内暴力の被害者、非行など、様々な事情で親元を離れた子どもたちのフリースクールで、名古屋家裁の補導委託先にもなっている。少年たちが力いっぱい打つ和太鼓は、今の世の中に向けた子どもたちの叫びのようにも、また、東日本大震災の直後であったこともあり、静かな祈りのようにも聞こえた。
和太鼓演奏に続いて、はぐるまの家代表の坂岡嘉代子さんと高橋直紹会員との息の合ったトーク「はぐるまの家からみた付添人活動」が行われた。
これまで、各地の弁護士会は、当番付添人制度を立ち上げるなどして、付添人活動の充実に取り組んできている。今後は、国の責任で国選付添人制度を拡充することがぜひとも必要である。今回のシンポを、全面的国選付添人制度の実現、ひいては少年の適正手続と成長発達の保障につなげていきたい。