会報「SOPHIA」 平成23年3月号より

災害復興支援に関する講演会開催される




総務委員会 委員
矢澤 孝征


平成23年3月18日、当会会館5階ホールにおいて災害復興支援に関する講演会が開催され(中弁連との共催)、NPO法人阪神高齢者・障害者支援ネットワークの黒田裕子理事長にご講演頂いた。

奇しくも、戦後最大の被害を生んだ東日本大震災がこの講演会の1週間前に発生しており、講演開始前には1分間の黙とうが捧げられた。

黒田氏はもともと看護師の仕事をしていた方であるが、自らも被災者となった阪神・淡路大震災の際に被災者支援のボランティア活動を本格的に開始した。以後、講演、執筆活動を行い、大学での講師を務める傍ら、16年以上にわたり、災害の直後のみではなく中長期にわたる支援活動を継続している。このような経歴を持つ黒田氏の講演は、豊富な現場体験に基づいており、通り一遍の報道を見聞きしているだけでは理解、想像が及ばないような被災地の現場の空気がよく伝わるものであった。

講演中、弁護士の役割についての言及が数多くあったので、本稿ではそれらのうちのいくつかを紹介したい。

黒田氏によれば、災害復興にも段階というものがあり、時間の経過に伴い求められる支援のあり様も変わってくるという。弁護士についていえば、初動時期(災害発生から72時間程度)においてそれほど活躍の場はないようだが、地震発生後1週間〜1ヶ月が経過したころには法律相談に対するニーズが高まってくるようである。法律相談の具体例として挙げられていたのはやはり金銭、財産絡みの問題である(例えば、被災により支払えなくなった債務の処理、災害後の区画整理への対応等)。せっかく災害を生き延びても、将来を悲観して自ら命を絶つ者もいることを考えると、これらは極めて切実な問題である。

また、法律相談のみならず立法面においても弁護士に対する期待が語られた。具体的には避難所を中心として支援物資の支給が行われることになっている現行災害救助法を改正し、病気や障害等何らかの理由でどうしても避難所に行けない人々に対応できるようにすることや、災害時に使い勝手の悪い介護保険を見直し、医療保険と連動させること等が提言された。

なお、地震発生の翌日から現地入りしていた黒田氏には、講演当日の午前3時に現地を出発するという強行軍で当地まで足を運んで頂いた。また、黒田氏は、講演終了後はとんぼ返りで直ちに被災地に向かったが、途中、自分が被災地の現場でみたことを全国に伝えたいという思いからテレビの生放送に出演するとのことであった。このようなタイトなスケジュールの合間を縫って、非常に有意義な講演をして下さった黒田氏にこの場を借りて改めて感謝申し上げたい。