会報「SOPHIA」 平成23年3月号より

「今、刑務所ではどんな処遇がされているか」


連続勉強会



第8回 少年刑務所と少年院の処遇の相違



刑事処遇に関する特別委員会 委員
木 村   斉


  1. 少年刑務所での処遇
     少年刑務所は、少年受刑者(裁判時に少年である受刑者)と、主に、可塑性に期待した矯正処遇が相当と認められる26歳未満の成人受刑者を収容する刑事施設である。ただ収容された少年受刑者は成人受刑者と分離され、特に区画した場所でその刑の執行を受ける。
     少年刑務所は、全国に7施設あり、平成23年2月から3月にかけて問い合わせをしたところ、収容されている20歳未満の受刑者は、合計12人である。
     少年受刑者も懲役受刑者である以上、刑務作業が義務づけられ、改善指導(犯罪責任の自覚、社会生活に適応するのに必要な知識及び生活態度を習得させるための指導)及び教科指導(学校教育の内容に準ずる内容の指導)の処遇を受ける。もっとも、少年受刑者の場合、導入期、展開期及び総括期という処遇過程ごとに矯正処遇の目標、内容及び方法を定めた綿密な処遇要領が策定される。
     刑務作業では、できる限り職業訓練を受けさせ、一般作業に従事させる場合にも資格取得に結びついた有用な作業に就業させる。
     改善指導では、個別担任者による日記指導、個別面接等や外部の篤志面接委員等による情操教育がなされ、教科指導では、できる限り学習に必要な便宜が図られ、教育専門官を多く配置して中等及び高等教育の学科指導がなされている。
     さらに、少年受刑者の処遇の特徴としては、居室が単独室とされている点、1人1日当たりの給与熱量が成人受刑者より高い点などがある。実親族間との面会及び信書の発信回数について配慮をしている少年刑務所もある。
  2. 少年院での処遇
     少年院は、家庭裁判所で少年院送致の決定を受けた少年を収容し、矯正教育を行う施設である。
     少年院は、全国に52庁(分院1庁を含む)があり、少年の年齢や心身の状況により、初等、中等、特別及び医療の4つの種類に分かれる。少年の非行の進み具合に応じて、一般短期処遇、特修短期処遇及び長期処遇の処遇区分があり、そして、少年の犯罪傾向、学力の程度、将来の進路希望、心身の状況等に応じて、一般短期処遇と長期処遇では処遇課程が設けられている。
     少年は、処遇課程にかかわらず、生活指導(健全なものの見方、考え方及び行動の仕方の育成)、職業指導(勤労意欲の喚起、職業生活に必要な知識・技能の習得)、教科教育(学習意欲の喚起、基礎学力の向上)、保健・体育(健康管理及び体力の向上)及び特別活動(自主的活動、レクリエーション、行事等の実施)の5つの領域において、個々の少年ごとに、新入時教育、中間期教育及び出院準備教育の3期に分けて矯正教育の目標、内容及び方法を定める個別的処遇計画が作成され、矯正教育が実施される。なお、少年の改善更生で保護者の果たす役割が大きいことから、保護者に対する指導助言をし、また、外部の民間協力・援助を利用している。
  3. 両者の相違
     少年が心身発達段階にあり、可塑性に富んでいることに配慮し、段階的な処遇をし、個々の少年に応じた職業技術を身に付けさせようとし、基礎学力を身に付けさせようとしている点で類似している。また、保護者の果たす役割を重視している点、外部の民間協力・援助を利用している点も類似している。しかし、少年刑務所では、刑務作業を前提とした枠内での処遇となるので、少年院のように、矯正教育を第一義的に処遇することができない。