会報「SOPHIA」 平成23年2月号より

適格消費者団体となったACネットの


今後の活動に期待してください!



消費者問題対策特別委員会
 委員 小田 典靖

平成23年2月19日(土)午後1時から、当会会館4階会議室において、あいち消費者被害防止ネットワーク(通称:ACネット)の第5回総会が開催され、午後1時30分から、当会との共催で特別報告会が開催された。


ACネットにとっては、適格消費者団体認定後の初めての総会・特別報告会であった。


とは言っても、大抵の会員には「適格消費者団体」という制度自体になじみがないと思われるから、まずは、この点から説明したいと思う。


平成19年6月7日施行の改正消費者契約法により、一定の要件を満たす消費者団体に、事業者による不当な勧誘行為や不当な約款の使用の差止めを求める権限が認められ、所定の手続きを踏めば裁判手続により差止めを実現できることになった。このような権限が認められている団体を適格消費者団体と言う。


適格消費者団体になるためには、内閣総理大臣に認定されることが必要であり、一定期間の活動実績や相応の体制整備が必要となる。


適格消費者団体による差止め請求の制度は、平成21年以降、景品表示法、特定商取引法においても導入されている。


ACネットは全国で9番目、中部地方では初めて適格消費者団体に認定された。適格消費者団体に認定されると事業者からの扱いが一変した。認定前は事業者との交渉で苦労したが、認定後は申入れ事項を真摯に受け止めてもらえるようになった。


さて、特別報告会では、認定後のACネットの活動により得られた成果(結婚式場のキャンセル条項の改善、歯科医院の不当な院内規定の廃止、債務整理大量宣伝事務所の表示の訂正)が報告され、ACネットの検討委員会委員長である鋤柄司会員がこれまでの活動と今後の展望について総括した。


そして、ACネットの活動報告の後は、京都の適格消費者団体である京都消費者契約ネットワークで活躍されている長野浩三弁護士による講演があった。京都消費者契約ネットワークは、最もたくさんの差止め請求訴訟を経験している団体である。その中心人物である長野弁護士の講演は、非常に刺激的であり、示唆に富むものであった。ACネットにとってもいずれは訴訟に踏み切るべき事案が生じると思われるが、その際には長野弁護士の講演を是非とも参考にしたいと思う。


最後に、適格消費者団体による差止め請求の今後について少し触れたい。現在の制度では、事業者の行為を差し止める権限しか認められていない。従って、将来の消費者被害の予防には役立つが、過去の消費者被害の救済とは直接的には関連しない。


しかし、消費者被害には、個々の被害者による独力での被害回復が困難である、同種被害が多数発生する傾向があるといった特徴がある。この特徴から、現在、消費者庁において集団的消費者被害救済制度(損害賠償請求制度)が検討されているが、適格消費者団体には損害賠償請求においても主体的な役割が期待されている。従って、今後はますます適格消費者団体の社会的役割が大きくなり、その分だけ市民からの期待も大きくなるが、ACネットとしては、その期待を裏切ることのないよう鋭意努力していきたいと思う。