「今、刑務所ではどんな処遇がされているか」
連続勉強会 第7回仮釈放・保護観察
刑事処遇に関する特別委員会
委員 川 本 一 郎
委員 川 本 一 郎
- 今回の連続勉強会では、仮釈放と保護観察がテーマとされた。
- 仮釈放とは、受刑者を刑期満了に先立って仮に釈放して一般社会において更生させることを図り、仮釈放期間を無事経過したときは再び施設に収容することを免除する制度である。刑期自体が短縮されるのではないから、仮釈放も刑の執行の一形態であると考えられている。
刑法28条は、受刑者に改悛の状があるときは「有期刑についてはその刑期の3分の1を、無期刑については10年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる」と定めている。この「行政官庁」とは地方更生保護委員会(地方委員会)である。仮釈放の決定だけでなく、仮釈放の取消し(刑法29条)も同委員会が決定する。
仮釈放の決定手続については更生保護法が定めている。同法では、刑事施設の長からの仮釈放の申し出がある場合のほか、そのような申し出がなくても、地方委員会が対象者その他の関係者と面接を行うなどして主体的に仮釈放の決定をなしうるとされるほか、仮釈放対象者について、保護観察所の長に対し生活環境の調整を求めることができるといったことが定められている。他方、同法には、仮釈放の決定に際しては、犯罪被害者側の意見や心情も聴取し参考にするということも定められている。
現状、仮釈放率そのものは概ね5割前後であるが、仮釈放が刑期のどの段階でなされたかを示す刑の執行率は年々高くなっており、特に無期刑受刑者については、刑期20年以内で仮釈放された者が平成15年以後出ていない等、厳しい運用となっている。更生保護法等の趣旨からはこのような運用は十分なものとはいえないが、裁判員裁判においては、仮釈放は刑法上の基準よりかなり厳しく運用されていること、また仮釈放の決定に際して被害者側の意見を聴取するなどの配慮がなされる等の事実を主張して情状弁護に役立てることなどが考えられる。
- 仮釈放された者は、仮釈放期間中、保護観察に付される(更生保護法40条)。無期懲役刑の場合は、終身保護観察期間となるのである。
保護観察には、上記仮釈放中の保護観察のほか、少年院の仮退院者や売春防止法上の婦人補導院の仮退院者に対する保護観察、さらに家裁の決定により少年に付される保護処分としての保護観察や、刑事裁判で保護観察付き執行猶予が言い渡される場合の保護観察がある(更生保護法48条各号)。
保護観察には、施設収容の回避手段としての役割と、施設収容後のアフターケアとしての役割があり、英米などではそれぞれ別の制度とされているが、日本では一つの保護観察制度として扱っていることになる。
保護観察に際しては一般遵守事項と特別遵守事項が定められる。現行の更生保護法では、遵守事項に違反した場合に仮釈放等の取消がなされることを前提に、単なる努力目標的な事項ではなく、具体的な遵守事項を定めるものとされている。しかし、実際には保護観察が途中で取消されることは意外に少なく、仮釈放者の95.3%、保護観察付執行猶予者の70.4%が期間満了で保護観察終了となっている。また裁判員裁判では、保護観察付の執行猶予が言い渡されるケースが多いことが知られている。保護観察付き執行猶予では再度の執行猶予が得られなくなるため、勉強会では、弁護人として「保護観察付きでも良いから執行猶予を」という弁論を行うことがよいか等も議論された。