会報「SOPHIA」 平成23年1月号より

のわみ相談所の人権賞受賞を受けて



人権賞小委員会 委員 宮本 曜爾

平成22年度人権賞を,「のわみ相談所・在日外国人の人権を守る会」が受賞し,さる平成23年2月15日にその授賞式が行われた。

「のわみ相談所・在日外国人の人権を守る会」は,一宮市を拠点として,「社会的弱者及び,生活困窮者の基本的人権を擁護」するための活動,「滞在する外国人の基本的人権の尊重及び経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約の実現」のための活動を行っている任意団体であるが,私が,人権賞小委員会で「のわみ相談所・在日外国人の人権を守る会」の調査を担当させていただいた経緯がある。

今回,会報の紙面をお借りし,授賞に関する記事を書く機会をいただいたので,「のわみ相談所・在日外国人の人権を守る会」の活動状況の特色をご紹介をさせていただこうと思う。

【「のわみ相談所・在日外国人の人権を守る会」の活動の特色】
1 活動の対象を限定せず,活動内容が広範であること

「のわみ相談所・在日外国人の人権を守る会」の具体的な活動内容であるが,ホームレス支援,生活相談・就労支援等の生活困窮者支援, 外国人の労働相談,ビザ問題に関する相談,人権被害救済等が主な活動となるが,これに留まらず,DV等女性被害者の支援活動も行っている。

また,その活動方法も,例えば,生活困窮者の支援活動一つをとっても,炊き出し,シェルターの提供等に止まらず,就労支援, 当事者団体の組織,(主に生活困窮者に向けた)断酒会の開催等多岐にわたる。

このように,「のわみ相談所・在日外国人の人権を守る会」の活動内容が多岐に亘るのは,平成10年より,生活困窮者,在日外国人に対する 支援活動を実践してきたが,支援の必要性を認めた場合,殊更,支援の対象者を殊更限定することなく,「社会的弱者」という大きな括りの中で 在日外国人,生活困窮者以外の方にも支援の手を伸ばした結果によるものである。

2 地域のボランティアにより構成される組織であること

「のわみ相談所・在日外国人の人権を守る会」は,地域の一般市民,民生委員,企業等がボランティアとして参加することで形成されており, 特定の政治団体等にその背景を有していない。

3 問題解決のためにネットワークを利用していること

「のわみ相談所・在日外国人の人権を守る会」が地域のボランティアにより構成された組織であることの一つの帰結として,同団体は地域のネットワークを活用することで,その活動を実践している(例えば,生活困窮者に対する食料支援の実践に際し,地域の企業,一般市民より,食料の提供を受けるために,「フードバンク」を目的とするネットワーク組織(『セカンドハーベスト名古屋』)を構築していること等がこれにあたる。)。

また,「のわみ相談所・在日外国人の人権を守る会」は,上記地域のネットワークのみならず,当事者によるネットワーク組織を形成し,これを利用して活動をしている。

具体的には,先ず「のわみ相談所・在日外国人の人権を守る会」は,在日外国人のネットワーク組織である「在日外国人の人権を守る会」の 運営組織としての一面を有しているが,右は,候補者の相談事業に対する在日外国人同士のアクセスを容易なものとし,かつ,候補者による問題の実体把握等を助けている側面がある。

加えて,「のわみ相談所・在日外国人の人権を守る会」は,野宿脱却者の自助組織「救生の会」の立ち上げ,運営を支援している (『救生の会』は,定期的に会報を発行し,野宿者《及び野宿脱却者》に対する啓蒙活動を行い,定期的に清掃活動等の社会貢献活動を実施し,地域社会との連携を深め, また,候補者が生活困窮者に対する生活支援の相談事業を実施するにあたってもメンバーが積極的に関わる等の活動を実践している。)。

「のわみ相談所・在日外国人の人権を守る会」の第三の特色としては,地域のネットワーク(地域における『共生』を目的とするネットワーク), 当事者により構成されるネットワーク(当事者の『自助』を目的とするネットワーク)という,2種類のネットワークの構築・利用があげられる。

 

【雑感】

複雑化する現代社会においては,個人が単一ではなく,複合的な社会的問題を抱えているケースが散見される。

このような場合には,単一の問題への支援だけでは問題を解決出来ないことは明らかであるが,ともすれば,支援機関が一つの問題に特化しているために, 支援自体が上手くいかないことがある。

その解決方法としては,支援者間のネットワークの利用が考えられるが,「のわみ相談所・在日外国人の人権を守る会」が「共生」「自助」のネットワークを 構築・利用している点は,問題の解決のため極めて有効な手法であると思われる。

また,従来,社会的問題として良く認知されていなかったため,社会的な支援の手が差し伸べられていない,いわば「支援の狭間」に陥っている人たちも多数いる。 こうした人たちに社会的な支援を行うためには,「のわみ相談所・在日外国人の人権を守る会」のように,良い意味で「型にはまらない」支援活動を行うことが重要ではないかと思われる。 現在,『のわみ相談所・在日外国人の人権を守る会』では,生活困窮者の中に,『薬物依存』の問題,何らかの『精神上の障がい』を抱えている方も存在することに鑑み, これらの方への支援を実践するうえで,医療機関との連携を強めることも検討中であるとのことである。こうした『型にはまらない』支援活動が広がることを期待している。