「今、刑務所ではどんな処遇がされているか」
連続勉強会 第6回 服役から出所へ
(更生保護、生活保護、社会福祉への連携)平林 拓也
- 1 はじめに
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平成23年1月18日午後3時から第6回の連続勉強会が開催され、今回は標記のテーマにて、私が報告した。
受刑者の改善更生を助け、再犯を防止するためには、出所後の更生保護が重要であるところ、従来より我が国の更生保護制度は機能不全に陥っていると言われてきた。平成17年には、法務省において「更生保護のあり方を考える有識者会議」が組織され、平成18年6月には、同会議の報告書として「更生保護制度改革の提言」が策定された。その後、更生保護法が成立、施行されるとともに、更生保護制度の充実に向けた取組みがなされるようになってきた。また、裁判員裁判が始まり、最高裁判所事務総局刑事局では、主に裁判員向けの説明のための「刑事施設と更生保護の実情について」と題する資料が作成され、更生保護制度の内容も盛り込まれている。
- 2 受刑者等の釈放について
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受刑者等に対する釈放前の指導や釈放時の手当てなどに関しては、「刑執行開始時及び釈放前の指導等に関する訓令」、「被収容者等の釈放に関する訓令」が定められている。
上記訓令によれば、釈放前の指導については、講話や個別面接などの方法により、社会生活で直ちに必要となる知識の付与、一般社会での生活に近い日常生活の体験、就職に関する知識及び情報の付与、更生保護に関する知識の付与などを行うこととされており、釈放前の受刑者については、原則として一般の受刑者とは別の居室とされ、就労に関する書籍等を居室に備え置くなど、特別の配慮がなされている。釈放時には、一定の場合には、受刑者等に対して帰住旅費が支給され、その他の帰住のための援助も規定されている。
- 3 更生保護制度について
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更生保護の内容には、@保護観察、A応急の救護(更生保護法62条)及び更生緊急保護(同法85条以下)、B仮釈放・仮退院、C生活環境の調整、D恩赦、E犯罪予防活動があるとされている。そして、更生保護に関わる組織等としては、法務省保護局の下に、地方更生保護委員会、保護観察所があり、保護観察官等の国家公務員の他に、保護司や更生保護施設等の民間ボランティアの活動によって支えられているのが現状である。このうち、更生保護施設は、全て民間の非営利団体によって運営されており、全国で104施設あり、収容定員の合計は2327人とされている。施設では、一定の要件を満たせば、刑務所から釈放された人や保護観察中の人で、身寄りがない人や適当な住居のない人を宿泊させて、生活指導、職業補導等を行っている。
- 4 新たな更生保護の方策
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これまでの民間の更生保護施設ではなく、保護観察所に附設した国の宿泊施設として、保護観察官による直接、濃密な指導監督や就労支援をするために、現在、自立更生促進センター2施設(福島・北九州)と就業支援センター2施設(北海道沼田町・茨城)が設置、運用されている。
また、受刑者等の中には、高齢又は障害により自立が困難で親族等の受入先がない出所者が多数おり、これらの者の再犯率が高いことなどから、法務省と厚生労働省が連携して、平成21年度から「地域生活定着支援事業」という制度を発足させ、矯正施設退所者に対する適切な福祉サービス等につなげて社会復帰の支援を推進することとしている。