会報「SOPHIA」 平成22年12月号より

刑務所勉強会


「今、刑務所ではどんな処遇がされているか」

連続勉強会 第5回
仮釈放の実情と無期懲役者の仮釈放





刑事処遇に関する特別委員会
委員 成 瀬 伸 子
  1. 仮釈放の実情  
     刑法28条は、有期刑は刑期の3分の1、無期刑は10年経過後仮釈放ができると規定している。仮釈放は受刑者に早期の社会復帰の目的を与え、更生の意欲を起こさせるものだが、実情は刑法通りにはいかない。
      有期刑の初犯では執行率7割未満の仮釈放は少なく、7割以上は刑務所で過ごさないといけない。これが累犯となると、8割未満は少なく、8割以上は刑務所暮らしとなる。
  2. 仮釈放の手続
      仮釈放は、刑務所の長からの申出により地方更生保護委員会が審理する。受刑者本人には申出する権利はない。しかも、仮釈放不許可の判断は決定によるものとされないため、中央更生保護審査会に対する審査請求ができない。不許可の場合には不許可理由の開示もされない。

  3. 無期懲役者の仮釈放 
     今回の本題はこちらである。世間には「無期刑受刑者は、受刑後10年又は十数年が経過すれば、仮釈放が許されて自由になる」という理解があるようだが、これは本当か。法務省がこの点を解明すべく、平成20年8月に勉強会を設置した。その結論はNO。世間の理解と現実の運用状況は相当隔たりがある。ということで、その報告書において、国民に無期刑の執行状況や仮釈放審理の運用状況を情報公開することは、裁判員裁判の適正運用にも不可欠として、年1回統計情報を法務省のホームページに公表すべきとした。その結果、平成20年から統計情報が公表され、それが毎年更新されている。
  4. 平成22年11月更新の統計情報から
      平成21年末の無期刑受刑者は1772人。平成21年の新仮釈放者は6人(平均受刑在所期間30年2月)に対し、死亡者は14人。仮釈放が許された者よりも在所中に死亡する者の方が多数である。
      その結果、仮釈放を許されず、相当長期間服役している者が少なくない。50年以上の服役者は7人もいる。
      過去10年間で、新仮釈放者65人のうち、在所期間が20年を下回る者は僅か3人である。近年は長期化の傾向にある。
      以上から、無期刑は、仮釈放自体がほとんどなされず、生命を終えるまで刑務所で過ごすという文字通り終身刑化しているのが実態である。
  5. 法務省保護局長通達
     平成21年3月に法務省保護局長から「無期刑受刑者に係る仮釈放審理に関する事務の運用について(通達)」が出された。これは、地方更生保護委員会は、無期刑受刑者の執行が30年を経過したら職権で仮釈放審理を開始せよというもの。これによって、平成19年には1件だった仮釈放審理が、平成21年には24件に増えた。通達は、法律の規定を運用で後退させるイメージがあったが、これは評価してもいいのではないか。でも、30年は長い。日弁連の意見書では、これを15年以内にせよと言っている。さらなる経過期間短縮が検討課題である。しかし、仮釈放審理がされても、帰住先が無くて許可されない者も多数存在する。これらの者を入所させる就業支援センター、自立更生促進センターの増設は急務であると思う。