会報「SOPHIA」 平成22年10月号より

第53回日弁連人権擁護大会開催

第3分科会


「廃棄物公害の根絶をめざして」




会 員 北川 ひろみ

トラックで次々と運び込まれるゴミ。廃棄されたゴミの山からは噴煙が立ち上る。福岡県の産業廃棄物処理場で、付近の住民が撮影した監視ビデオの一幕である。廃棄されたゴミからは有害物質が検出されており、有害物質の熱で雪も積もらないという。ガスや汚水の流出等により、住民は頭痛や汚臭に苦しんでいる。「廃棄物公害の根絶をめざして」と題した第3分科会では、こうした各地の廃棄物不法投棄の現場の状況が報告され、事態の深刻さを改めて痛感することとなった。

本シンポの開催地でもある岩手県では、青森県の廃棄物処理業者が、10年以上にわたり岩手県と青森県の県境の山中に膨大な廃棄物を不法投棄したという事件が起こっている。この事件に直接対応された増田寛也前岩手県知事の講演では、上記業者に対する撤去等を求める措置命令、原状回復の行政代執行、産廃特措法による一部国費支援と県民の莫大な負担(岩手県の負担は80億円超とのこと)等の経緯が紹介された。上記業者に対し収集運搬業の許可を与えただけに留まる岩手県では、廃棄物処分業の許可も与えた青森県や、首都圏の排出業者から処理委託を受けて上記業者に再委託をした中間処理業者の所在する県に対する監督義務の懈怠を問う声が根強いとのこと。もっともである。

続いてのパネルディスカッションでは、投棄現場の復旧に要する費用負担、産業界や自治体、国の対策などについて討論された。原状回復や廃棄者の責任追及が容易でないこの問題に対処するためには、排出業者や処理業者に対する法規制を強化することは勿論、有害物質の規制や管理を含めた長期的・総合的施策が必要であると感じた。