会報「SOPHIA」 平成22年10月号より

第53回日弁連人権擁護大会開催

第2分科会


「デジタル社会・日本と世界の今」




会 員 燒リ 道久

 第2分科会は、「デジタル社会・日本と世界の今」と題した5名の実行委員による基調報告、地元岩手県のアマチュア劇団が社会監視学という学問分野が樹立されて相互監視社会となった近未来の消極的側面を演じた劇の録画上映、マルティンポール筑波大学大学院准教授によるドイツでのプライバシー保護に関する沿革を踏まえた情報通信技術の革新とプライバシー保護の両立に関する講演、共通番号制とライフログ(個人の生活及び行動の記録)に関するパネルディスカッション及びシンポジウムの総括の5部構成で実施された。

 現在の我々はインターネットや電子マネーのない生活は想定できないし、監視カメラ等の有用性も否定できないであろう。しかし、情報通信技術の飛躍的な進歩と発展の継続は、個人識別性を有していない個々の情報を本人の関与なしに結合させることによって個人識別性を有する個人の情報群を構築することを可能としている。また、政府は、2011年度通常国会での法案提出を目指して現在の納税者番号と社会保障番号とを共通化する制度の導入を検討している上に、民間IDとの連携可能性をも視野に入れた国民ID制度の2013年までの創設を検討している。こうした状況の中で、自己実現と民主制の基礎である情報プライバシー権を如何に保障してゆくか。我々法律家が高度情報通信社会での利便性とプライバシー権の両立のために行動すべき時であることを実感した貴重な分科会であった。