会報「SOPHIA」 平成22年8月号より

法教育・はじまりました


愛知教育大学とのコラボレーション!


法教育特別委員会 副委員長 庄司俊哉

 木々の生い茂る小道を、温かい木漏れ日に照らされながら通り抜けると・・・自分が大学生に戻ったような・・・そんな心地よい白日夢に包まれながら、愛知教育大学のキャンパス(刈谷市)を何度か訪れた。

 本年4月、大学の教員や教師の卵である学生たちと、「法教育」について、少しでもつながりを持てないかという淡い期待だけで、初めて訪問させてもらった。ところが、その場で真島聖子先生から、「ぜひ私の授業に協力いただけませんか!」と強いアピールをいただいた。真島先生は「判決書教材を活用した中高生の人権教育授業を作る」という講義を担当されておられた。これは、グループに分かれた大学4年生が、4カ月かけて、中学の公民授業の教材研究、指導案作成、模擬授業の発表を行うという講座であった。当委員会からは、5月28日10:50〜12:20の講義に、委員7名を無償で派遣することになった。

 講義当日、弁護士が、各グループにチューターとして加わり、判決書の読み方、社会的背景、判決の社会的影響、どのように授業に生かしたらよいか等、直接学生にアドバイスをさせていただいた。各担当は次のとおり。

  1. いじめ自殺事件     大杉浩二会員
  2. 水俣病事件       庄司俊哉
  3. らい予防法違憲事件   松隈知栄子会員
  4. セクハラ事件      白鳥亜紀会員
  5. 在韓被爆者地位確認事件 水野大輔会員
  6. インターネット名誉棄損事件 細溝耕太郎会員・下村高之会員

 この授業の際、私は「侵害された人権だけではなく、反対の立場の主張も、当時では、『一理あった』とされたのだから、それらにも目配せをしたうえで、人権の大切さを取り扱って欲しい。」と助言した。水俣病であれば、当時は「多少の犠牲を払ったとしても、企業利益を最大限追求すべき」という意見及び社会的風潮があったことが理解できて、初めて判決の重みが理解できると考えたからだ。それから約2カ月後、学生たちの模擬授業発表の機会に立ち会わせていただいた。厳しい時間的制約の中で、学生たちは、弁護士の助言を踏まえつつ、精一杯、判決の重みを伝えようとしていた。ただその中に「原告と被告の主張の対比」を重視したばかりに、いじめ自殺事件において、「いじめる人権」と「いじめられる人権」を衝突し合う価値として比較考量させる模擬授業があった。傍聴していた他の学生からは異議・質問が出なかったので、急いで私は「いじめる自由や権利などありませんよ!」と注意を喚起した。こんな場面も弁護士によるサポートが役立った場面といえよう。とはいえ、この失敗は、学生たちの失敗とはいえない。彼らが学んできた社会科・公民・司法教育が必ずしも十分ではないことを示唆しているのではなかろうか。
 今後も真島先生をはじめ、多くの教育大学関係の方々と親交を深め、法教育の理解が広がるよう頑張りたいと考えている。