会報「SOPHIA」 平成22年8月号より

「特集 中高生のためのサマースクール」

法教育委員会の熱い4日間


中高生のためのサマースクール開催


法教育特別委員会委員長 熊田登与子

1 新企画−小学校5・6年生の法廷傍聴
 今年も7月26日の法廷傍聴を皮切りに、当委員会夏の恒例行事「中高生のためのサマースクール」を開催しました。26・28日の午前午後が法廷傍聴、29日は体験講座、30日は刑事模擬裁判を実施しました。今年は、対象を小学校高学年に広げるか否かを委員会で議論した結果、まず、人気の法廷傍聴を小学校5・6年生に体験してもらい、申込状況や当日の反応を見ながら来年度の企画につなげよう、ということになり、26・28日の午前のみ、小学校5・6年生の法廷傍聴を行いました。参加者は、中高生が延べ87名、小学生が延べ22名でした。
体験講座は、ここ2年ほど企画が定番化しているので、新企画をという議論もしましたが、10月15日開催の中弁連シンポ実行委員会に有力委員を取られている都合で見合わせることになりました。参加者は90名でした。刑事模擬裁判は、今年も書き下ろしのシナリオ「失恋放火事件−消せなかった恋心−」を62期の新委員が被告人・証人・検察官・弁護人役になり熱演しました。参加者は59名でした。
2 法廷傍聴で困ったこと
 昨年までは、中高生向けの事件ということで、窃盗・恐喝等の単独事件を選び、傍聴してもらっていました。夏期休廷中で開廷数が少ないながらも、簡裁・地裁を巡れば、何とか午前・午後各20名の入れる法廷が確保できていました。
ところが、裁判員裁判が本格的に始まった今年は、開けてびっくり、単独事件がほとんどなく、裁判員裁判かつ強制わいせつと強盗致傷あるいは強姦と強盗殺人とか、従来の子ども達向けの法廷傍聴では避けて通るような事件しかないことがわかりました。けれど「本物の裁判を見たい!」と折角申し込んでくれた子ども達を失望させるのは忍びないということで、事前に罪名を知らせ、かつ「聴いていて気分が悪くなったら、遠慮せずに外に出ていいよ」とレクチャーすることで、強制わいせつと強盗致傷の裁判員裁判を傍聴してもらいました。子ども達のアンケートが気になりましたが、2名ほど「事件の内容がこわかった」という感想があったものの、大多数は、実際の裁判員裁判を傍聴できてよかったという感想で、主催者としては、ほっとしました。尚、小学生の法廷傍聴は、数少ない単独事件と高裁の刑事事件を傍聴してもらうことで、しのぎました。
3 来年に向けて
 少しずつ参加者が減少しています。ことに高校生は、この時期補講があるため申込が減っています。けれど、愛知県下の全中・高校に募集要項をDMで送ったところ、社会科の先生が興味を示して体験講座・刑事模擬裁判を熱心に傍聴され、感激して帰って行かれるという、うれしいこともありました。中学校では平成24年度から、高等学校では平成25年度から、新学習指導要領で、幸福・正義・公正といった法的な価値を理解させることが社会科の学習内容として扱われます。新学習指導要領のもとで、出前授業の需要の拡大が見込まれますが、学習単元や成績評価とは関係なく、弁護士会ならではの講座を企画できるのが、サマースクールの良さです。打ち上げで新たな主任・副主任を決め、来年に向けて早くもスタートを切った講座チームもあります。毎年、意欲満々の新委員が増えていますので、来年は、何とか新たな企画も加えたサマースクールを開催したいと思います。