朝鮮学校訪問記
家庭の状況にかかわらず、全ての意志ある高校生等が、安心して勉学に打ち込める社会をつくるため、公立高等学校の授業料を無償化するとともに、国立・私立高校等の生徒の授業料に充てる高等学校等就学支援金を創設する、いわゆる高校授業料無償化制度が4月からスタートしました。
その対象に朝鮮学校を含めるかについて、大いに議論され、結局、結論が「先送り」にされてしまったことについては、記憶に新しいのではないでしょうか。今後、政府は第三者による評価組織を設け、今夏を目処に、朝鮮学校が無償化の対象となる「各種学校」に該当するかを決定する方針です。
ところで朝鮮高級学校は全国で10校ありますが、そのうちの一つが愛知県豊明市にある愛知朝鮮中高級学校で、日本の中学生と高校生に相当する学年の生徒たちが就学しています。
朝鮮学校では、いったいどのような教育が行われているのでしょう。
百聞は一見に如かずということで、本年4月26日、子どもの権利特別委員会では、多田委員長、杉浦・吹野両副委員長を始めとする有志13人が同校を訪問して授業の様子を見学し、子ども達との懇談会を行いました。
当日、私は所用のため、少し遅れて朝鮮学校に到着しました。
同校は校門を通ってからなだらかな上り坂が続き、その先右手に校庭が、さらに奥に校舎が現れます。緊張しながら一人で校舎の入り口を探してうろうろしていると、なんと校庭でサッカーをしていた生徒の一人が「こんにちは。見学者の方ですか?」と明るく声をかけてくれたのです。
彼に案内してもらったお陰で、すぐにみなさんと合流できましたが、彼のさわやかな笑顔と折り目正しく清々しい態度は、息子を持つ母親であれば、自分の子どもも、ぜひこういう風に育ってほしいと願わざるを得ないものでした。
さて朝鮮学校では、まず中学と高校の各学年の授業の様子を順に見学しましたが、どのクラスも非常に落ち着いていて、生徒たちが授業に集中していました。
懇談会では、高校1〜3年生の生徒と先生方の合計20人ほどが集まって下さり、意見交換を行いました。
生徒たちはとてもひたむきで、まじめ。
親の経済的な問題や、歴史認識の問題にも正面から向き合っており、素直で率直な質問や、柔軟な受け答えには感心するほかありませんでした。
参加した他の会員からも、「先生方が熱意を持って教育にあたっていて生徒間だけでなく生徒と先生の絆が強い」「いろいろな誤解や偏見の中で自分の存在を肯定的に受け止めていく場として朝鮮学校はかけがえのない場だと実感した」「重い社会の矛盾を背負っていることを感じながら一生懸命な生徒らを励ましたくなった」等々の感想がありました。
そもそも朝鮮学校は、各都道府県知事から各種学校の認可を受け、ほぼすべての大学が受験資格を認めていることから、教育内容については折り紙付きのはずです。
しかし来春には、経済的な理由で朝鮮学校の高等部に進学できない中学生が出てきてしまうかもしれません。
「政治」という大人の都合で、子どもの学ぶ権利が不当に差別されることがあってはならないという思いを強くした一日でした。