コールセンター本格稼働
弁護士業務改革委員会 副委員長 大 西 正 一
- 1 中小企業分野への弁護士の関与の状況
- 日弁連は、2007年に全国1万5000社を対象に中小企業の弁護士ニーズ調査を実施した。それによると、「中小企業の半分以上が弁護士を利用したことがなく、6割強が相談できる弁護士がいない。しかしながら、中小企業の多くは、債権回収、雇用問題、クレーム対策、契約書のチェック等の法的課題を抱えており、実際には税理士、社労士、司法書士等の隣接士業に相談しており、その理由を弁護士に相談すべき問題だとは理解していなかった」と回答している。
- 中小企業の弁護士へのアクセス障害が浮き彫りとなった形だが、それには、弁護士側が訴訟外業務に積極的には取り組んでこなかったことも一因と考えられる。
- 2 日弁連の取組み
- そこで、日弁連では、2007年より中小企業庁との間で中小企業支援で連携していくことで合意し、事業承継、事業再生、下請取引適正化等の具体的分野で協力して取り組んできており、各弁護士会においても、当会での地域弁護士制度をはじめとして、商工会、商工会議所等と連携して、アクセス障害を克服する取組みが展開されてきた。
- さらに、2008年9月には、日弁連法的サービス企画推進センターより、弁護士が組織的かつ全国的に法的サービスを提供を行うことのできる体制を整備すべきであるとの提言を受けて、日弁連は、2009年10月に、「日弁連中小企業法律支援センター」(通称ひまわり中小企業センター)を設置した。
- ひまわり中小企業センターでは、中小企業相談窓口機能の強化や中小企業法務に精通する弁護士の要請・研修の強化等を具体的活動内容としており、今後、中小企業者に、弁護士が身近で有用な存在であることを積極的にアピールしていくことにしている。
- 3 コールセンターの開設
- ひまわり中小企業センターでは、「中小企業相談窓口の強化」策として、本年4月より全国共通の電話番号で法律相談を受け付ける「コールセンター」(通称:ひまわりほっとダイヤル)を開設すべく準備をしている。全国どこからでも中小企業者が0570-001-240(おーこんな、おーい、ちゅうしょう)の電話番号に電話すれば、自動的に各地の弁護士会に転送され、弁護士会から担当の弁護士に配点され、担当弁護士から原則24時間以内に相談者に電話連絡して相談日時を決め、原則3日以内に担当弁護士の事務所で相談を受けられる態勢を構築する。
- コールセンターは、@全国共通の電話番号、A身近な弁護士の紹介、Bスピーディな対応を大きな特長としており、相談する中小企業者に利便性の高いものになっている一方で、対する弁護士側には負担の重いものである。全国一律のサービスを提供する体制を整備する必要があるため、各単位会の協力が不可欠である。従って、体制の整備に苦労している単位会があるのも事実で、4月の開設時に間に合わない単位会が出るおそれもある。
- 4月の本格実施に備え、2月1日から12日まで、当会と横浜弁護士会の2単位会でコールセンターのトライアルを実施した。土日祭日を除き実質9日間で当会で26件、横浜弁護士会で24件の相談があった。平均すると当会では1日3件程で、年間にすると700件程に上る。
- 当会では、既に、コールセンターよりさらに利便性の高い地域弁護士制度を運用しているので、4月以降、この制度の運用エリアを商工会地域からさらに商工会議所地域に徐々に拡大していくとともに、それを補完するものとして、このコールセンターを積極的に活用していくことにしている。会員各位のご理解とご協力をお願いする次第である。