会報「SOPHIA」 平成22年2月号より
表浜に行ってきました。
公害対策・環境保全委員会 委員 水野 将也

平成21年10月31日、公害対策・環境保全委員会の研修で表浜海岸を見学してきました。表浜海岸は、愛知県豊橋市と田原市にまたがる全長約50キロの弓状の砂浜と海岸崖や丘陵地から形成された海岸です。表浜海岸のように砂浜から山にかけて植生が続いているのは全国的にもごく少数で、非常に貴重な場所となっています。また、最近ではアカウミガメの産卵地としてTVなどで頻繁に取り上げられており、ご存じの方も多いのではないかと思います。

多少時期外れとのことでしたが、いざ現地を訪れてみると、その景色の美しさに言葉を失ってしまいました(海がない岐阜県出身のため海を見ると無性にソワソワする私の性分を差し引いても非常に綺麗な場所でしたが、私の語彙能力の問題で薄っぺらい表現となっております)。

もっとも、関係者の方の話を聞くにつれ、この美しい景色は、志ある方々の不断の努力によってかろうじて守られている(破壊されるペースを抑えている)非常に繊細なものであるということを痛感せざるを得ませんでした。

表浜海岸の環境保護活動を行っているNPO法人表浜ネットワークの方によれば、表浜海岸は、アカウミガメの産卵地として有名になり注目が集まった結果、多くの人が訪れるようになり、中には車で砂浜まで入ってくる人もいるため、アカウミガメと同じように貴重な海岸の植生が破壊されていること、それにより表浜海岸の環境悪化が進行し、産卵するアカウミガメが減少するという皮肉な結果をもたらしているということでした。

また、行政が表浜海岸の周辺に人工の防波堤を造ったために、かえって潮の流れが悪くなり砂浜が減少してしまっていること、同様に行政がアカウミガメの卵を回収して孵化施設で集中的に孵化させていることも、子ガメの生存能力を低下させ、また感染症の蔓延により大量死につながるおそれがあるなど、行政の自然に対する不十分な理解がかえって事態を悪化させていることも問題であるとのことでした。

その他、風力発電施設(人家に近接して設置された場合、近隣住民がめまいや動悸、耳鳴りなどの健康被害を訴える例があり、低周波騒音の周辺への影響について環境省などが実態調査を行っています)を見学し、また、産業廃棄物処理が適切に行われず不法投棄が行われていた(いる)といった深刻な問題についても地元の方からお話を伺う機会を得るなど、非常に内容の濃い研修であったと思います。

表浜海岸を始めとする、豊橋市、田原市が抱える環境問題を通じ、環境問題はどのような人々がどのように携わっていくべきか、行政はどうあるべきか、そこに法律家はどのようにして関与すべきなのか、という環境問題に普遍的な問題を改めて考えさせられました。