会報「SOPHIA」 平成21年10月号より

人権大会プレシンポが開催されました

消費者問題対策特別委員会
委員 竹之内 智哉


  1.  10月17日、日弁連第52回人権擁護大会プレシンポジウムが、「高齢者・障がいのある人が安心して暮らせる社会を〜高齢者・障がいのある人の消費者被害をなくすために〜」のテーマのもとに開催されました。

    今回のシンポジウムで高齢者・障がいのある人の消費者被害が取り上げられたのは、これらの方々が、消費者のなかでも特に悪質業者にねらわれやすい方々であり、その被害救済・予防に取り組まなければ、安全で公正な社会を実現することができないと考えられるからです。


  2. 基調報告

    障がい者福祉について研究をされている筑波大学の名川勝先生から、障がいのある人の消費者被害の救済と予防について報告がありました。

    被害を受けた本人自身「自分が悪い」と考えているケース、本人が被害に気づかないケース、本人が後ろめたくて相談できないケースなどがあり、周りが気づく必要があることが報告されました。被害を受けている場合、気づくことができるポイントがあるので周りが気づきのポイントを学ぶ必要があることが指摘されました。また、事件を解決しても再度被害にあう方が多いので、関係者の連携が重要になることが報告されました。


  3. 寸劇

    消費生活相談員による消費者被害の発見から解決に至るまでのわかりやすい寸劇が行われました。

    次々販売の事件をもとに、業者が一人暮らしの老人をねらおうとしていること、無料点検と偽って家に上がり込むなどの業者の行う騙しのテクニックなどがわかりやすく解説されました。

    その後、騙された高齢者の様子がおかしいことに気づいたヘルパーが高齢者と一緒に消費生活センターに相談をしたことで事件が解決するまでの道筋が演じられました。


  4. パネルディスカッション

    名川勝先生、伊東真氏(名古屋市消費生活センター職員)、近藤芳江氏(認定ケアマネージャー・主任介護支援専門員)、荻原典子会員をパネリストに、石川真司会員がコーディネーターをつとめ、パネルディスカッションが行われました。

    伊東氏及び近藤氏から実際の被害救済の事例が報告され、伊東氏からは、確実に被害を救済するには、クーリング・オフの関係から早く被害を発見をすることが重要であることが指摘されました。近藤氏からは、周りが被害について気づくことが重要であるとの指摘がありましたが、ヘルパーにとって救済に動くことはやりがいのある仕事である反面、動いたからといって報酬には反映されないこと、忙しい仕事でもあり、現場の担当者には複雑な気持ちがあることも報告されました。

    高齢者・障がいのある人の被害を周りが気づくことが重要であり、気づきのポイントを周りが知識として身につける必要があり、身近な人、地域などで情報のネットワークを作ることが必要であることを痛感しましたが、一方で、現実としてはネットワーク作りが難しいことも指摘されており、いかに効果的なサポート体制を構築していくかが今後の課題であることがよく理解できました。

    弁護士会としては信頼してもらえるネットワークを作り、関係諸団体と連携して被害の防止に向けて協力していくことが重要であることを改めて実感した次第です。






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