- 第1 プロローグ
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大切なマイホームを欠陥から守る制度「住宅瑕疵担保履行法」がいよいよ10月1日からスタート致しました。10月1日以降に引き渡す新築住宅については、住宅事業者に「保険加入」か「供託」が義務付けられました。
このことを知っていましたか?
8月に実施した住宅事業者へのアンケート調査では、5.7パーセントが義務化の開始日を知らず、消費者への無作為調査でも66.9パーセントが法律を知らないと答えています。住宅瑕疵担保履行法は、近年新聞でも大きく報道された欠陥住宅問題がその端緒でした。
- @平成10年頃の秋田県の第3セクターが建設した木造住宅に欠陥が続出したいわゆる「秋田県木住事件」。
- A平成17年の構造計算書の偽装があったいわゆる「姉歯事件」。
- Bそして同時期に戸建住宅のフランチャイズメーカーで耐力壁の量が足りない住宅が数百戸判明するといった事件。
- C建材メーカーが耐火建材の試験データーをごまかして認定を得ていた事件。
等々がありました。
- 第2 住宅品質確保法
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このような欠陥住宅問題に対応した制度が、9年前の平成12年4月に成立しました。「住宅品質確保法」がそれです。この法律は、新築住宅の「構造耐力上主要な部分等」と「雨水の浸入を防止する部分」については、瑕疵担保期間を10年にしました。
新築住宅の供給者(住宅事業者)は、柱、梁(はり)、基礎、土台といった地震や建物の重量を支える部分と屋根、壁、窓のサッシといった雨漏りの浸入を防止する部分の瑕疵については、10年の間、瑕疵担保責任を負うこととなったのです。
ところが、その間に工務店やハウスメーカーなどの住宅事業者が倒産すると瑕疵修補費用の負担はすべて消費者にかぶさってきます。姉歯事件しかりです。富士ハウス破産事件しかりです。
消費者は、新たなローンを抱えながら更に自らの負担で立替や補修をおこなわなければならなかったのです。
- 第3 住宅瑕疵担保履行法
こうした姉歯問題を教訓に、住宅事業者が倒産しても消費者にそのツケを廻さない仕組みが検討され、平成19年5月、住宅事業者に予め補修費用を確保させておくための法律が成立。これが「住宅瑕疵担保履行法」であり、本年10月1日からいよいよスタートしたのです。
この住宅瑕疵担保履行法のポイントは、新築住宅を消費者に提供する住宅事業者に対して、保険に加入するか保証金を供託するかのいずれかを義務付けたことです。
保険に加入したり保証金を供託するのは、注文住宅の場合は新築住宅を引き渡す工務店やハウスメーカーであり、建売住宅や分譲住宅の場合は新築住宅を引き渡す宅建業者です。いずれも、建設業の許可、宅建業の許可のある業者のみが保険・供託の義務を負わされています。
10月1日以降に引き渡される新築住宅が対象となり、「新築」とは、建ってから1年以内でまだ人が居住していない住宅、「住宅」とは、人の居住の用に供する家屋をいいます。
- 完成後1年を経過した住宅
- いったん居住後転売された住宅
- 事務所、倉庫、物置、車庫
- 特別擁護老人ホーム、有料老人ホーム等事業を行うための施設
- 一時使用目的の仮設住宅
これらはいずれも対象外です。
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万一、[構造耐力上主要な部分等]と[雨水の浸入を防止する部分]に瑕疵が見つかった場合、新築住宅を取得した消費者は、本来であれば住宅事業者にその瑕疵の修補をしてもらいますが、住宅事業者が倒産していた場合には補修費用は保険金や供託金から支払われることになります。倒産のツケを消費者は負担しないようになりました。
- 第4 保険加入
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保険加入の場合、住宅事業者は国土交通大臣が指定した住宅専門の保険法人に工事着工前に保険加入の申込みをします。保険法人は、現場検査をしたうえで保険を受け付け、住宅事業者は保険法人に保険料を支払い保険契約を締結します(1軒10万円前後)(掛け捨て)。工事中も保険法人は現場検査を行います。
万が一、住宅事業者が倒産したり瑕疵を補修できない場合は、消費者は保険法人に補修費用を請求できます。最高2000万円まで支払われます。殆どの瑕疵はこの金額でカバーできます。もし心配であれば、3000万円、4000万円、5000万円の保険(オプション)も用意されていますが保険料は高くなります。
契約時には、住宅事業者が保険に加入しているかどうかを、注文住宅の場合は請負契約書に、建売住宅の場合は売買契約書に記載されることになっているので、契約書をよく確認して下さい。
また、住宅の引渡し時には、住宅事業者がどこの保険に入っているか、限度額はいくらか、といった証明書を忘れずに受け取って下さい。
万が一、住宅事業者が保険に加入し忘れていた場合でも、住宅引渡し前であれば保険加入は可能ですが、保険料が割高になります。基本は工事着工前に保険申込みをしておくべきです。
保険法人は、国土交通大臣が指定します。平成21年7月1日現在は、「株式会社住宅あんしん保証」はじめ5法人が指定を受けています。
- 第5 供託について
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多数の住宅事業者は保険加入を選択すると思いますが、供託を選択した住宅事業者は、新築住宅の供給実績に応じて半年毎に一定額を法務局に供託することになります。年平均500戸の住宅事業者の場合、供託金3億4000万円程度を10年間供託することになります。
万が一住宅事業者が倒産した場合には、消費者は法務局に補修に要した費用の還付請求をすることが出来ます。供託金の還付請求があった場合、国土交通大臣がその還付する額を確認することになっています。
消費者は、契約時の書面で、住宅事業者が供託しているかどうかを確認することが必要です。注意したいことは、供託は半年毎に実績に応じて行われるので、供託前に事業者が倒産すると保証を受けられない場合があります。基準日以前にも供託することはできるので、事業者に「何時供託するのか」「いくら供託するのか」といったことをよく確認しておく必要があります。
- 第6 愛知住宅紛争審査会
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保険加入の住宅についての紛争は、安価な紛争処理制度を利用することが出来ます。各地の弁護士会におかれている「住宅紛争審査会」がそれです。あっせん、調停、仲裁をしてくれます。費用は、原則申立て費用の際の1万円のみで、鑑定費用、現場検証費用、あっせん人への報酬などの負担はありません。弁護士と建築士があっせん人になります。
いきなり紛争処理申立てはという場合には、財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターが相談業務をしています(03-3556-5147)。お気軽に電話でご相談下さい。
- 第7 結び
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マイホームを安心して購入していただくために、住宅品質確保法、住宅瑕疵担保履行法が成立していますが、何よりも住宅事業者がきちっと法律を守ることが必要です。消費者も遠慮せずに住宅事業者に確認し、賢くマイホームを手に入れて欲しいものです。
「保険が付された住宅」の瑕疵に関する紛争の相談を受けられたときは、当会の愛知住宅紛争審査会にあっせん・調停の申立てをして紛争の解決を図ることを勧めて頂きたいと思います。