会報「SOPHIA」 平成21年8月号より

「特集 中高生のためのサマースクール」

友人殺人事件〜友情の行方〜

刑事模擬裁判劇


法教育特別委員会 委員
大瀧 保

今年も、刑事模擬裁判劇が開催されました。

今年は裁判員制度がスタートしたこともあり、模擬裁判劇も裁判員制度を意識したものとしました。

また、法教育特別委員会において、中学、高校での法教育に役立つ教材として作成されたDVDの内容と連動するようなシナリオにしたことが今回の模擬裁判劇の特徴の一つでもあります。

具体的な内容としては、被害者の親友である被告人が、被害者と口論の末、被害者を殺害したという容疑の殺人事件で、被害者の犯人性を判断する案件です。

参加した中高生には、事件後の被告人の様子を見た証人や被告人のアリバイを証言する証人の証人尋問、被告人質問を中心とした模擬裁判劇を見てもらい、その後、学年毎の10名弱のグループで、被告人が有罪か無罪かを議論してもらいました。

模擬裁判劇は、例年若手会員の関心が高く(もしくは体験講座に比べて楽だと思われているかもしれません。)、今年も60期、61期の多くの会員に参加して頂きました。

模擬裁判劇の役を担当する会員には、中高生に分かりやすく、飽きさせないために、オーバーリアクションの演技をお願いしたところ、皆さん練習会では戸惑っていたものの、本番ではノリが良く、個性的な人物を演じて頂けたので、参加した中高生も会員の迫真の演技に食い入るように見て、一生懸命メモを取っていました。

また、毎年恒例となった被告人に対する会場の中高生からの質問についても、会場から鋭い質問が次々出されました。

会場からの質問を受け付けるようになって、4年目ですが、毎年中高生の鋭い感覚には驚かされます。今年もシナリオ担当としては、冷や汗をかきましたが、被告人役の松井隆会員が若干言葉に詰まりつつも、被告人の爽やかなイメージを崩さず、鮮やかに答えたため、大事に至りませんでした。

午後からの評議については、私は、高校2年生と3年生のグループを担当しました。

主に、事件後の被告人の挙動、アリバイ証言の信用性、凶器となった灰皿に付着した被告人の指紋の評価について議論をしたのですが、皆自分なりに考えをしっかり述べ、活発な議論ができたように思います。

その議論の中で、事件後に被告人が着替えなかったことについて、シナリオでは、証拠隠滅のため慌てていたので、着替える事に気が回らなかったという有罪方向の間接事実に位置づけていたのですが、生徒から、犯人なら返り血とかを心配するので着替えるのが普通だと思うとの意見があり、目から鱗が落ちる思いでした。

また、今回の動機が、恋愛の絡んだ友人同士の口論がきっかけとされていたこともあり、皆身近な(?)感覚で、動機を評価していたのが印象的でした。

裁判員制度がスタートし、彼ら、彼女らが近い将来、裁判員として同じような評議を行うと思われますが、事件を身近に考え、柔軟に議論する姿を見て、安心しました。

参加した中高生には、今回の模擬裁判劇の経験で、自分の考えを述べること、皆と議論をすることの大切さに気が付いてもらえるとありがたいと思います。