会報「SOPHIA」 平成21年05月号より

知立団地一日派遣村のご報告

多重債務対策本部 委員
田中 智

  4月26日の日曜日に知立団地内の集会場において、当会や愛知県派遣村実行委員会などの後援のもと一日派遣村が開催されました。西三河地区においては、3月21日・22日に岡崎で開催されたものに続くものとなります。相談員は当会所属の弁護士11名を含め、司法書士・ケースワーカー・社会保険労務士・医者など、当日の飛び入り参加を除いて23名。このほか、18名以上の通訳と31名以上のボランティアの方々に協力をいただくことができました。

  開催地となった知立団地は2000近くの戸数を抱え、その居住者の約半数が日系ブラジル人です。彼らは不況のあおりをまともに受け、その7割から8割が職を失ったともいわれています。今回の派遣村では多数の外国人相談者が押し寄せることが見込まれ、事前に確保できた相談員や通訳の人数では対処しきれないことが予想されたため、対象を知立団地の住民のみに絞って相談を行うこととなりました。

  当日は受付開始の1時間前から行列ができ、定員満了で受付を締め切らねばならないほどでした。相談者はブラジル人・ペルー人など全員が外国人であり、主な相談内容は失業等による生活維持困難が58名・労働相談が2名・雇用保険相談が3名・賃金の未払等が3名・健康相談が5名で、失業等による生活維持困難の割合が際立っています。緊急性に差はあれ46名に生活保護申請の必要性が認められ、うち19名は早急に生活保護を受けねばならない緊急性の高い状況に置かれていました。彼らについては、派遣村終了の翌日から派遣村の関係者が同行して生活保護の申請が行われ、現在までに多くの申請が受理されています。

  今回の派遣村相談及びその後の生活保護申請同行を通じ、地方における外国人の生活保護申請においては以下のような問題点があることが明らかとなりました。まず、相談者の点では、所得の低さをカバーするため1室に何人も同居し、他人名義の部屋に居住しているなど、世帯認定の上で困難を来す複雑な住環境にある人が多いことです。これを是正すべくアパートを借りようにも、言葉や習慣の違いなど外国人特有の事情によりあらゆることが日本人よりも困難です。また、カード負債を抱えている方やローン残の自動車を所持している方も多く、これも円滑迅速に生活保護を受ける上での妨げとなっています。行政の側もこれらの事情への対処に手間を要しており、問題解決までの時間が長引く傾向にあります。相談窓口の体制自体も、財源不足のため通訳人が用意できず、また、保護開始決定が出るまでの緊急支払い・緊急貸付もできない状態にあります。申請を支援する側としても、通訳人や申請同行経験者など効果的な支援を行うための協力者の数が絶対的に不足している状況です。

  今回の派遣村については、アンケートに協力してくださった50名の相談者中49名から、役に立ったとの肯定的な評価をいただくことができました。その後も派遣村のことを伝え聞いた市外の方が関係者のもとに相談に訪れているとのことです。今回のような外国人失業者・生活困窮者のための支援と法律相談の場に対する需要は相当に高いものがあります。

  彼らはこれまで日本人に比べ低い賃金と労働条件のもとでも勤勉に働き、日本の経済を支えてきてくれました。長期にわたり日本で生活したことに伴い、母国に帰ろうにも生活基盤が何もない方もいます。1人でも多くの方がこの問題に理解と関心を示して協力の手を差し伸べてくださることを願っております。






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