会報「SOPHIA」 平成21年04月号より

老いを豊かに
〜「遺言の日」講演会及び無料相談会開催される〜

高齢者・障害者総合支援センター運営特別委員会
委員  熊田 均

1、講演者の村田幸子さんは、NHKの解説委員を経て、退職後、福祉ジャーナリストとして活躍されている方である。現在は週に1回のNHKの「ラジオ深夜便」等を担当し、「現役時代より忙しいです」とのことである。平成21年4月18日(土)、100名を超える市民の方々の参加を得て、中日ビル内にある中日パレスにおいて「老いを豊かに」との題による「遺言の日」の講演会及び無料相談会が開催された。

2、「私は股関節の手術を受けており座ってお話をさせて下さい」との村田さんの言葉から始まった講演会であったが、長年、高齢者の問題に関わってきた我が国の屈指のジャーナリストであり、御自身も「高齢者の立場である」ことをふまえ、非常に含蓄のある講演であった。その概要は以下の通りである。

3、(1)老後を豊かに暮らすためには、まず「自己選択」「自己決定」のために準備が必要であることが強調された。高齢になることはある日突然訪れるのではなく、本来は誰でも準備できるはずである。しかし、日本の高齢者は、戦後の生活体験の中で「依存体質」になってきてしまっている。多くの場合、誰もが介護が必要な時がくるが、介護保険の導入は、「援助をしてあげる」「決められたメニューを与えられる」との依存体質を助長させてしまったことが否めない。

(2)子育ての期間はせいぜい22年間、しかし、高齢者である期間は60歳退職後、25年以上はある。介護が必要となるまでの期間は相当長いはずであるが、まず、そこに至るまでの期間に「どんな暮らし」を作り上げるか、いかに刺激的な生活ができるかが問われている。「老後をどうしたらいいか」とよく聞かれるが、モデルはない、そのモデルを作り上げるのが私達だと答えている。ただ一般的には、女性の老後は「経済的自立」が問題となり、男性の老後は「生活的自立」が問題となると思う。

(3)老後の備えについて、次の点は念頭においてほしい。自分のことを自分の意思で決めることに慣れていないので、その訓練が必要。普段から「コーヒーでいいね」と言われる生活から「コーヒーがいい」と言える生活を心掛けること。「日夜働いてきた人」には住んでいる「地域」に貢献していないことが多い。この場合「地域」は「手強い」。簡単に地域には入れないことを念頭におくべきである。

(4)老後は法と否応なく付き合うことになる。自分に必要な法制度を学び、その情報収集を怠らないこと。元気な間に財産管理契約や任意後見制度、判断能力を失った時の法定後見制度、死後の問題としての遺言等をきちっと学んで準備しておくこと。日本人はまだまだ「サービス」にお金を払うということに慣れていない。「介護ヘルパー利用」のように「直接」体に感じる、目に見えた形で助けられるものについては金銭負担をするが、後見制度等のようないわば法的「サービス」利用のためにも一定の費用が必要であることを念頭において欲しい。

4、講演終了後、質疑がなされ、その後ブースに分かれ、15名程度の無料法律相談が行われた。






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