会報「SOPHIA」 平成21年04月号より

全国一斉派遣切り・雇い止めホットライン
〜職を失い、住居も失う非正規労働者たちの実態に迫る〜

高齢者・障害者総合支援センター運営特別委員会
柘植 直也

1 2009年3月9日(月)、弁護士会館3階において、「派遣切り・雇い止めホットライン」が実施されました。このホットラインは、日弁連の呼び掛けにより全国の単位会等50の地域において実施されたもので、全国での相談件数は1031件でした。日弁連の呼び掛けで実施するのは6月に続いて2回目ですが、当会では、6月、11月、12月に引き続き、2008年度の4回目の実施になります。午前10時から午後8時まで、合計30名の会員が相談員として参加し、6本の電話で対応しました。相談件数は、78件と、これまでの3回と比べると若干少なかったですが、相談内容として、これまで以上に深刻なケースが多く、1件ごとにより多くの相談時間を要したことも件数が若干減少した要因になっていると思います。

2 3月末に厚生労働省が発表した資料によると、昨年10月から今年6月までに雇い止め等により職を失う労働者は約19万2000人に上るとされています。この調査は、可能な範囲での任意の聞き取りによって把握したものであるので、実際の派遣切り、雇い止め等の件数は、さらにこれを上回るものと思われます。この深刻な状況は、今回のホットライン、そして、1月以来、中村区役所に連日100名を超える職を失った人々が集まり、ミニ派遣村の様相を呈していること、さらに、3月21、22日に岡崎で実施された反貧困駆け込み相談会、4月26日に知立団地で実施された一日派遣村の結果にも現れています。

3 相談件数78件のうち、労働問題に関する相談が60件で、うち非正規雇用が49件、契約中途解約が26件、雇い止めが19件、そして、寮から追い出され家を失った件が8件もありました。例えば、自動車製造業の派遣社員で、1月半ばに雇い止めされ、3月初めに寮を追い出され、まんが喫茶で泊まったり野宿しているケース、派遣社員として2年程度働いたが、雇い止めされ、2月に寮を追い出され、名古屋駅近くで生活しているケース、1月いっぱいで仕事を切られ、1か月以上野宿生活をし、所持金が100円しかないケース等、いずれも極めて深刻なケースばかりでした。非正規労働者が解雇された場合、仕事だけでなく、寮からも退去させられるため、住居も失い、所持金も底をつき、食べるものもなく、直ちに生命に関わるような事態に至ってしまいます。

4 また、相談の中には、生活保護に関するものが21件、多重債務に関するものが6件ありました。派遣切り、雇い止めにより職を失い、ハローワークに通っても殆ど仕事が見つからないため、日々の生活資金の確保のため生活保護の申請を必要とするケースが急増しています。また、住居を失った場合も、保護を申請し、アパートを確保する必要があるケースが急増しています。本来であれば、生活保護の前の段階で、様々なセーフティネットが用意されているべきところ、生活保護以外に殆ど機能するセーフティネットがない現状も、浮き彫りとなりました。

5 相談者の年齢層は、20代までは10件、30代が16件、40代が16件、50代が13件と、60代及び70代各1件と、あらゆる年齢層に分布しました。この中で、年齢が判明している57件のうち、働き盛りの50代までの件数が55件であることが、派遣切り、雇い止めの問題が、他人ごとでない、いかに深刻な状況かを示しているものと思います。






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