会報「SOPHIA」 平成21年1月号より

特集 就職最前線(前編)

島根弁護士会の就職の現状

   会報編集委員会 

 会報編集委員会では、全国で最も弁護士の少ない(平成20年4月1日現在)島根県の就職の現状について、平成19年度同会会長の熱田雅夫弁護士にお話を伺いました。

  

会報 島根県の人口、弁護士数などについて教えてください。
熱田  島根県の人口は約73万人(愛知県の10分の1程度)、弁護士数は2009年1月現在で46人(うち女性7人)です。支部別に見ると、松江本庁は人口31万5425人、弁護士28人(弁護士1人当たりの人口は1万1126人。カッコ内以下同じ)、出雲支部は人口21万2322人、弁護士8人(2万6540人)、浜田支部は人口10万8960人、弁護士6人(1万8160人)、益田支部は人口6万6216人、弁護士3人(2万2072人)、西郷支部は人口2万2279人、弁護士1人(2万2279人)です。
会報 近年、島根県弁護士会は、弁護士の増加率が大きいようですが、増加の経過、理由についてお聞かせ下さい。
熱田  増加の経過については、次の表を参考にしてください。

 増加の理由としては、公設事務所の誘致がまず挙げられます。島根県は、ひまわり基金法律事務所発祥の地です。平成12年の浜田支部の石見(いわみ)ひまわり基金法律事務所に始まり、浜田ひまわり基金法律事務所、益田支部の益田ひまわり基金法律事務所、石西ひまわり基金法律事務所が開設され、延べ6人が着任し、そのうち2人が任期を終えた後、島根に定着しています。公設事務所開設以前は、平成8年に44期が登録換えをして、48期が登録して以降は、新規登録はなかったのです(元裁判官や大学教授の登録は除く)が、公設事務所開設により着実に会員が増加しました。
 公設事務所、スタッフ以外だと、平成15年に55期で2人登録した後、毎年2〜3人増加しています(現在公設およびスタッフをカウントしないと、55期3人、56期2人、57期2人、58期2人、59期3人、60期3人、61期が5人)。

会報 就職勧誘が功を奏したのでしょうか。
熱田  ここ2年は積極的に就職勧誘はしていません。私が入会した頃(平成6年)、会員拡大のために奔走していたのとは隔世の感があります。
会報 現在の島根県弁護士会の就職についての需要と供給のバランスはどうでしょうか。
熱田  島根県弁護士会では、過疎対策や被疑者国選、法律扶助などの需要に応えるため、積極的に公設事務所を誘致してきました。これが成功し、先ほどお話したようにひまわり公設事務所が開設されました。さらに法テラスができ、スタッフ弁護士が着任されました(松江の法テラス2人、浜田の法テラス《法テラスのうちの4号対応事務所:法律扶助ではない事件もできる》1人)。公設やスタッフ関係はほぼこれでよいのではないかと思っています。
 公設以外に一般的に勤務弁護士を募集している事務所を見ますと、61期で1人即独した人がいますが、その人を除けば、勤務弁護士の需要と供給はいまのところ一致していると思います。即独した人も、アメリカで公認会計士と税理士をして、その後、司法試験に合格した経歴の方で、不安はありません。
会報 今後の就職の需要と供給はどうでしょうか。
熱田  弁護士が複数いる事務所も増え、一般的な勤務弁護士の需要は、もうそれほどないのではないでしょうか。7〜8年前の地域司法計画においては、島根県の適正な弁護士数を60人(弁護士1人当たりの人口1万人強)と想定しています。東部(松江、出雲、隠岐)で40人から44人くらいまで、西部(浜田、益田)で15人から17人くらいまでが適正規模ではないでしょうか。ですから、あと10人くらいで適正規模ということになります。62期で6人くらい地元出身者の就職希望があり、まだ採用事務所は決まっていませんが、恐らく就職することになると思います。そうするとそろそろ飽和状態でしょう。1年後か2年後には、いっぱいになるといった状況です。まだ、西部は9人くらいなので少し余裕がありますが。
会報 60人以上の規模は難しいのでしょうか。
熱田  島根県の人口や経済規模などからすれば、60人以上はなかなか難しいのではないでしょうか。島根県に来れば仕事があるという状況ではありません。
会報 島根県弁護士会に登録するのはどのような方でしょうか。
熱田  日弁連や司法研修所での説明会がきっかけだった方や松江修習だった方、それと最近はこちらの出身の方が多いですね。新司法修習が始まり修習生は12人来ていますが、新60期、61期それぞれ1人が島根に登録しました。
会報 これから就職希望者が増加すると思われますか。
熱田  就職希望があっても、弁護士の質の問題もあると思います。就職にあぶれたからと言う理由では来てほしくないと思います。一生懸命やる精鋭の島根県弁護士会60人でなくてはならないと思います。そうでないと、地域の人に迷惑をかけることになります。島根県西部には余裕があると思いますが、一生懸命される方に来てほしいです。
会報 即独について伺いますが、ご自身も即独でしたか。
熱田  はい。島根県弁護士会では55期くらいまでは、ほとんど即独といっていいくらいです。即独でも、これまでは問題はなかったと思います。弁護士同士の相互扶助などで弁護士のスキルも上がり、経済的にも十分やっていけました。弁護士会の目が届き、お互い顔が分かる良い関係が続いていると思います。61期で即独の人も修習先の弁護士等が支援することになっています。ただ、会員の増加に伴って今後は分からないですが。
会報 東京や大阪で即独は大変なようですが。
熱田  島根に就職したくてもできないので即独、という問題は聞きません。ただ、2年後はわかりませんが。
会報 新人勤務弁護士の待遇に変化はありますか。
熱田  待遇は変わっていないと思います。また、即独でも結構、収入はあるのではないでしょうか。今のところですが。
会報 最後に一言お願いします。
熱田  一般的な弁護士の仕事はどこでやっても同じだと思います。島根で一生懸命やりたいという人は歓迎します。ただ、先ほど述べたように、就職にあぶれたから、という理由では来てほしくないですね。
会報 ありがとうございました。




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