会報「SOPHIA」 平成21年1月号より

特集 就職最前線(前編)

統計から見た大都市と地方

   会報編集委員会 

1 登録数の増加−他単位会との比較

 従来、弁護士が単位会相互間、また単位会内で偏在しているという問題が指摘されていた。
 平成3年以降からの司法試験改革、平成14年以降からの司法制度改革による司法試験合格者数の増加政策は、大都市と地方との弁護士の偏在を解決したのだろうか。
 平成12年(52期と53期が登録した年)と、平成15年(同年登録の合格者が1000名に収まっていた最後の年)を基準(1)として、平成21年1月4日現在の登録人数が何倍となったかを、いくつかの単位会ごとに求めてみた。また、参考までに、平成19年の登録人数で、対応する地裁の民事通常訴訟新受件数を割った数字を記載した。
 表1の上3つを大都市とするなら、大都市だから増加率が低い、地方だから増加率が高いという関係は見られない。合格者がどの単位会に登録するかという点では、従来の傾向に影響を与えなかったようである。
 他方、弁護士1人あたりの地裁の民事通常訴訟新受件数をみると、単位会ごとの差は顕著である。
 表1の一部の単位会について、弁護士1人あたりの地裁の民事通常訴訟新受件数の推移を、グラフ1に示した。
 訴額を考慮した日弁連の『弁護士白書2008年版』でも同様の傾向が観察されている。
 これでは、東京では生活していけないのではないかと心配にもなる。

 

【表1】
      対H12比 対H15比  地裁新受
 東京三会  1.52   1.34    3.2
 大阪    1.34   1.22    6.2
 愛知県   1.49   1.34    8.0
 三重    1.57   1.45    19.7
 岐阜県   1.45   1.35    16.7
 福井    1.84   1.63    13.6
 金沢    1.41   1.34    10.6
 富山県   1.37   1.30    15.3
 広島    1.41   1.37    9.2
 島根県   2.09   1.84    23.7
 福岡県   1.39   1.28    10.9
 仙台    1.44   1.36    10.0
 札幌    1.56   1.49    10.8
 香川県   1.45   1.41    9.0

 

 なお、年度ごとに事件数には波があり、また事件数は人口に対して一定ではない。地方の単位会では、事件数が増加しており、過払金訴訟の増加の影響や、弁護士の増加による事件の掘り起こしなどの原因が考えられる。従って、弁護士が増えたからといって、単純に弁護士1人あたりの事件数が減っているわけではない。
 

2 登録数の増加−本会と支部

 今度は、愛知県内で同様の対比を試みた。

 

【表2】
     対H12比 対H15比  地裁新受
 本会   1.38   1.29     6.8
 一宮   1.73   1.46    50.3
 半田   2.60   2.17    43.0
 西三河  1.62   1.47    21.5
 東三河  1.48   1.26    17.4

 

 県内では、半田支部の増加が群を抜く。他の支部の増加傾向は、比較的本会に近付きつつある。
 もっとも、弁護士1人あたりの地裁の民事通常訴訟新受件数をみると、本会(地裁本庁)と支部(地裁支部)では、格段の差が残っている。
 弁護士1人あたりの地裁の民事通常訴訟新受件数の推移を、グラフ2に示した。
 本会と支部との差は、そっくりそのまま、忙しさの差に直結するわけではない。
 本会の弁護士が支部で提訴しうる事件を受任したり、管轄を選べれば本庁で提訴したりするからである。
 しかし、支部はまだまだ忙しいと評価できよう。

 

3 弁護士への潜在的需要

 弁護士への潜在的需要を推測するため、弁護士1人あたりの人口を割り出してみた(登録人数は1と同じ、人口は県ごとでは平成17年、県内では平成20年)。

 

【表3】
        弁護士1人あたりの人口
  東京三会          961
  大阪           2578
  岐阜県          16724
  三重           16524
  島根県          16133
 (愛知全体)         5877
  本会           3541
  一宮           41787
  半田           47033
  西三河          24934
  東三河          17976

 

 弁護士1人あたりの人口の値は、単位会間で、大きな開きがある。
 また、愛知県全体の値は、本会地域への弁護士の集中が反映されたものである。
 支部地域では、地方単位会と同程度、あるいはそれ以上の値となっている。

 





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