会報「SOPHIA」 平成20年12月号より

平成20年度人権賞受賞者
「共の会」
〜寄る辺なき外国人を支援して

人権擁護委員会人権賞小委員会
委員 坪井 陽典


  1. 平成20年度の人権賞は、長年にわたり、幅広く外国人を支援してきた「共の会(代表者狩浦正義氏)」が受賞しました。

    そこで受賞団体の担当報告者として、同団体の紹介をさせていただきます。


  2. 設立

    「共の会」は、昭和61(1986)年に設立された「あるすの会(正式名称:滞日アジア労働者とともに生きる会・狩浦正義代表)」として活動を開始しています。この「あるすの会」も平成2(1990)年度に人権賞を受賞しています。

    「あるすの会」は、フィリピンやタイなどから「不法就労目的」で来日した「女性」の「労働問題」に対処するために発足した団体です。しかし時代が経つにつれ、在日外国人には、男性も増え、また家族ぐるみで来日する外国人も増加してきました。こうした状況の変化により、外国人の諸問題を解決するには、ビザのない者や女性だけに限定していては問題の解決ができず、さらには労働問題だけに限定していても諸課題の適切な解決はできなくなりました。

    そこで「あるすの会」とは協調関係を続けながらも、広く外国人の諸問題を解決するために、平成5(1993)年に「共の会」は発足しました。


  3. 活動内容

    日本に定住する外国人、難民、日系外国人の生活支援を電話や面談をすることにより行っています。一昨年(平成19年)1年間だけでも、26か国743名の外国人から電話相談を約500件、面談での相談を240件弱行っています。

    具体的には、次のような活動をしています。

    国際結婚(日本人と外国人、外国人同士の場合など)

    外国人が日本人と結婚する際には、ビザの取得問題と相まってさまざまな書類の提出が要求されます。例えば、出生証明書・学校の成績証明書・犯罪履歴・信仰する宗教などです。しかし外国人は言葉の問題などもあってこれらの書類を具備し提出することが容易ではありません。

    そこで「共の会」では、ビザが下りるまでこれら外国人のサポートを行っています。

    医療の問題(特に医療費)

    「共の会」では、病気になった外国人が医療費を支払えない場合、最高10万円まで医療費の立て替えを行っています。この貸付金は、基本的には、貸付金額の半額を返済してもらう約束となっていますが、返済をされることはまれです。

    また特に重病で、かつ日本国内で手術をしなければいけない場合などは、治療費が多額となるため、病院も身元保証人がいなければ手術に応じてくれません。そこで「共の会」では、身元保証人を探したりもして、手術が受けられるようにしています。

    刑事被疑者・被告人支援
    1. 「共の会」が発足した直後の平成5年ころは、日系外国人の刑事問題が多くなってきました。しかし当時の名古屋弁護士会では、外国人刑事問題につきまだ十分な理解がありませんでした。そこで「共の会」は、名古屋弁護士会で勉強会を開催し、当会弁護士とともに、その問題と対処方法につき検討しました。

      そしてこの勉強会で顕著になった問題点が、刑事事件の通訳人の不足であった(当時は法廷通訳制度不存在)ため、「共の会」では、つてを通じて通訳人賛同者を集め、通訳の研修などを行ってきました。そしてこの活動が現在の法廷通訳の礎となっています。


    2. 在日外国人は、日本の法律はもとより日本語にも通暁していません。「共の会」の存在は、外国でも著名なため、外国人家族から電話で問い合わせがあると、弁護士会を通じて、被疑者に接見し、刑事事件終了まで、援助をしています。


      難民の問題

      愛知万博・中部国際空港開港(平成17年)を機に難民問題が増加の一途をたどっていますが、これについても「共の会」は対応をしています。

      不法残留者の子どもの就学問題かつて不法残留者の子どもは、外国人登録がないため、愛知県内の小中学校に入学できませんでしたが、共の会などで構成する「ジュビリー2000子どもキャンペーン」(代表世話人は、「共の会」代表者)の活動により、平成16年4月からは入学が可能になりました。


      身元保証人

      日本に居留する外国人は、身元保証人が必要ですが、必ずしも身元保証人を見つけることができないことがあります。そこで「共の会」では、ネットワークを利用して適切な人を探し出し、紹介をしています。

  4. 「共の会」の構成

    常勤スタッフは7、8名で、日本人3名、フィリピン人、ブラジル人、アメリカ人、ペルー人が各1名で全員ボランティアとして活動しています。通訳可能な言語は、タガログ語、ポルトガル語、ビルマ語、スペイン語、アラビア語、スリランカ語、中国語、ベトナム語、インドネシア語などです。


  5. 「共の会」が行っている活動は、「これが売り」というものはなく、「とにかく何でもやる」というのが最大の特徴です。

    今現在(平成20年12月)「共の会」は、ペルー領事館とともに、ペルー人の派遣切りの問題にも力を注いでおり、私も少しだけお手伝いをさせていただいております。

    このように在日外国人は、問題が発生した場合、「共の会」に連絡をすれば、その問題がどういう問題であれ、解決の糸口は見つけることができます。

    こうした点で「共の会」は、日本語の不自由な在日外国人にとって非常に便宜で有益な団体です。

    このように日本に住む「寄る辺なき外国人」を支援し続けてきた「共の会」が、人権賞を受賞したことは、「人権の世紀」といわれる21世紀にふさわしいものであると思います。






行事案内とおしらせ 意見表明