会報「SOPHIA」 平成20年8月号より

弁護士と趣味
『ワインとフランス料理』


  

弁護士は、ストレスが溜まる仕事をしているせいか、多彩かつ抜きんでた趣味をもっていることが多いようです。会報編集委員会では、会員の中から、普段からはうかがい知れない趣味を持っている人を紹介する新シリーズ「弁護士と趣味」を企画しました。

第1回は、ワインとフランス料理が趣味の横山貴之会員(57期)を紹介します。今回は、会報委員の中から違いが分かる男として評判の高い2名を横山会員宅に派遣し、実際に、ワインと横山会員手作りのフランス料理をごちそうになってきました。

ある日曜日の夕方。とある住宅街のマンション。緊張の面持ちでチャイムを押す。横山会員ご夫妻が笑顔でお迎え。玄関にはワインセラーが。

これは、はじめに買った19本入りの小さいもので奥に大きなものがあるという。

ダイニングに入り、テーブルに着く。飾りにもワインとフランスの香りが漂いしゃれている。なぜかBGMはヘビメタ。横山会員には小さな二人の子供がいるが、預かってもらったので、美しい奥様と一緒にゆっくりと食事ができるとのこと。幸運である。

まず、シャンパンをいただく。ジャック・セロスという生産者の作っている「イニシャル」という名のシャンパン。横山会員の説明によると、シャンパンメーカーは、規模によって、大きく2つに別れ、1つは、ドンペリニョンやヴーヴクリコを作っているような大規模メーカーで、ネゴシアン・マニュピュラン(NM)という(日本酒でいうと、大関や松竹梅のようなメーカー)。もう1つは、原料となるブドウの栽培・醸造・瓶詰・熟成等を一貫して自分たちで行っている、レコルタン・マニュピュラン(RM)という、小規模生産業者(日本酒でいうと、地方の小さな造り酒屋)。ここ数ヶ月に横山会員が飲んだシャンパンの中で、最も印象に残っていたのがジャック・セロスだったそうな。さっそく乾杯。おいしい。芳醇かつ繊細な香り。つまみは「チーズ風味のグジュール、トリュフの入った自家製ソーセージ」。うまい。ソーセージまで自家製とは。料理とシャンパンとの相性が抜群で,シャンパンがぐびぐび進む。

一品目(アミューズ・ギュール)には「人参のムース、ガトー仕立て、フルーツトマトのジュレ添え」。

オードブルに「鱧と白身魚、ホタテのテリーヌ、ルッコラのソース」。

どれも素人の域を完全に超えた一品である。あっけにとられる程うまい。作り方を聞いたが、複雑かつ手間がかかりすぎているので紙面では説明不可能。

このあたりで、白ワインに。ブルゴーニュで作られているピュリニー・モンラッシェ・ペリエール2000。シャンパンと同じ、シャルドネというブドウから作られている。同じ品種のブドウを使うのに、全く味の異なる酒が出来るのが非常に興味深く、飲み比べていただこうという趣向もあって選んだとのこと。これもおいしい。

続いて「アスパラガスのスープ」。上品な味わい。

魚料理は「カレーの薫るオマールと茄子のガレット仕立て、コライユのソース」。カレー風味の意外性が茄子とオマールエビを引き立てる。マッチングがすばらしい一品。

このあたりで白ワインが空き、赤ワインへ。シャトー・カントナック・ブラウン2000(フランスのメドック地区・ボルドー地方にある、カントナック村で作られているもの。メドックのワインは1級から5級、級外に格付けがなされており、このワインは3級)。味わい深い。

肉料理は「塩漬け豚バラ肉のソテー、ミルクのソース」。

作るのに1週間以上かかるという。豚バラ肉をソミュール液(水に塩、胡椒、ローリエを入れたもの)に1週間ほど漬け込み、八角、セロリ、にんじん、玉葱、白ワインを入れたゆで汁で2時間ほどゆっくりゆでる。一晩置いて、ソテーする。ソースはゆで汁と牛乳を泡立てたもの。うまい。シンプルな味付けで豚のうまみが引き出されている。これもワインとの相性が抜群である。あっという間に1本目の赤ワインが空く。当会会員の手料理であることを忘れさせる内容である。(行ったことがないが)三つ星レストランと遜色がない。

ほとんど会報委員の二人が飲んでおり、二人ともかなり酔っぱらってきた。

会話も弾み、横山会員と奥様の馴れ初めなどが明かされるが、ここには書けない。

2本目の赤はル・プティ・シュヴァル2000(同じくボルドー地方にある、サンテミリオンというところのワイン)。どんどん進むが、このあたりの感想は思い出せない。 

デザートは「ほんのりピスタチオのクリームブリュレ」と食後のコーヒー。

本当においしい。

横山会員は、20歳の頃からワインの魅力に取り憑かれ、ワインに合う料理を追求しているうちに、現在のワイン好き、料理好きに至っているという。奥のワインセラーにはおよそ200本のワインが眠っている。

料理を本で勉強するのはもちろん、食事に行ったときにシェフに質問することもしばしば。フランス料理だけでなく料理全般に興味があるという。このあいだは、中華お焦げの海鮮あんかけを作り好評だったらしい。

燻製にもはまっており、豚バラからベーコンを作ったり、鴨の胸肉に軽く燻香を付けたり、味噌漬けにしたフォアグラを燻したり、半熟卵を燻玉にしたり、色々楽しめるそうだ。ベーコン一つにしても、塩漬けの方法(塩以外にどんなスパイスを使うか等)、燻煙はどの木のチップから出すか(サクラ、ヒッコリー、ナラ、リンゴ等)など、非常に奥が深いとのこと。ベーコンは2週間ほどかかるが、燻香は非常に新鮮で、普段食べている市販のベーコンとは全く別の食べ物であるという(市販のベーコンはチップによる燻製ではなく、燻液によって人工的に燻香を付けているものがほとんどらしい)。燻香が落ち着いたところで薄切りにし、フライパンでカリカリになるまでソテーすると、しっかりした赤ワインと抜群の相性だそうだ。子供に添加物のたくさん入ったものを食べさせたくないとの思いもありソーセージも自家製とのこと。

奥様は「私も、飲んだり食べたりは大好きなので夫の趣味は大歓迎。ただ、ワインセラー、本、食器、グラスなどがどんどん増えるのが気になります。それとメタボな夫の体型を見ると心配です。これからも健康に気をつけて、おいしい料理とワインをお願いします」とのこと。

横山会員は、愛知県弁護士会にはワインの専門資格(ソムリエやワインエキスパート等)を持った弁護士はまだいないようなので、頑張って第1号になれるよう、仕事の気分転換も兼ねて勉強を続けたいと決意を語っていた。

おいしくて楽しい時間はあっという間に過ぎ、千鳥足で帰路についた。

P.Sまた、お呼ばれに与かりたいです。






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