会報「SOPHIA」 平成20年07月号より


やってみよう、病院選び 使ってみよう、医療機能情報提供制度

日弁連人権大会プレシンポ
「どうやって病院を選びますか?〜患者が求める医療機能情報とは〜」

会 員  大 辻 美 玲
1.「どうやって病院を選びますか?」
 誰でも必ず直面する「病院選び」。そのために設けられた「医療機能情報提供制度」をご存じだろうか。「安全で質の高い医療を実現するために」この制度をどう位置づけることができるのだろうか。本年7月26日、日弁連人権大会のプレシンポとして行われた表記シンポジウムについて報告する。
2.医療機能情報提供制度の概要(第1部)
 医療機能情報提供制度は「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」により創設された。厚生労働省医政局の飯村康夫氏によれば、必要な医療情報を集約化し、一律かつ分かりやすく提供するという視点に立ち、都道府県が主体となって、
  • インターネットによる医療機能情報の提供、
  • 医療安全支援センター等による相談
  • 助言を行うものである。
 ・の基礎となる医療機能情報は、医療機関が法に基づいて都道府県に報告するもので、その内容は、医療機関の名称や診療科目といった「基本情報」、対応言語や障害者へのサービス内容等(院内サービス)、対応できる疾患や治療内容等(提供サービス)、医療従事者の人員数、治療結果に関する分析の有無等(医療の実績、結果に関する事項)など極めて多岐にわたる。
3.使い勝手はよい?悪い?(第2部)
 などと項目を羅列してみても、何がどう便利なのか理解するのは容易ではない。
 知らなければ評価はできない、ということで、シンポでは会員が実際にインターネットでこの制度を使うデモンストレーションを行った。具体的には「自宅近くで緊急帝王切開に対応できる産婦人科のある病院を探す」などの事例を設定し、愛知県が運用している
「あいち医療情報ネット」http://www.qq.pref.aichi.jp/mi/ap/qq/men/pwtpmenult01.asp
の画面を追いながら実際に病院探しをした。
 その結果、便利な点として、地域内にある医療機関を地図上で一覧できる、各医療機関の設備や医師等の人数などが分かり比較できること等があり、不十分な点として、「医療機能情報」という言葉を知らなければ「あいち医療情報ネット」にアクセスするのが容易ではない、治療成績などの「結果」については数値が出ていないこと等が指摘できそうだということが分った。
4.どう育てていくか?(第3部)
 第2部までの理解を踏まえて、安全で質の高い医療を実現するという観点から、この制度の問題点や今後について議論が行われた。  この中では、・情報の項目が多く全ての医療機関の情報を把握する「網羅性」を評価する意見がある反面、・在宅医療等の特定分野の情報については評価項目の立て方が悪く使いにくい、・医療機関が提供する情報が基礎になるため第三者による評価が必要な項目もある、・運用が始まったばかりで全ての医療機関を把握できていないという問題も指摘された。また、患者が最も必要としているであろう治療成績等の情報については、現状では客観的な評価基準が定まっておらず公表は不適切である、評価基準は確立しつつあり、今後の検討課題である等の意見が出された。
5.感想
 本制度はまだ始まったばかりで、情報の発信・利用方法などの課題は多い。しかし、患者が正確な情報を得て適切に医療機関を評価することは、確実に安全で質の高い医療に繋がる。その意味で、情報へのアクセスを支える本制度は評価すべきものであり、利用者が評価し改善進化させていくことが重要であると感じた次第である。




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