会報「SOPHIA」 平成20年07月号より


外国人相談シリーズ
韓国の家族関係の登録等に関する法律について


会 員  朴   憲 洙
1.家族関係の登録等に関する法律について
  1. 戸主制は、韓国憲法36条に定める婚姻と家族における個人の尊厳及び男女平等の原則に反するとの憲法裁判所の「憲法不合致」決定を受けて、戸主制が全面廃止となり、2008年1月1日、身分登録(戸籍)の方法を規定する「家族関係の登録等に関する法律」が施行されました。

  2. 同法律で定める身分登録制度は「家族関係登録簿」という名称になり、個人単位の「1人1籍制」を採用し、個人単位で登録基準地、姓名、本貫、性別、生年月日、住民登録番号、出生・婚姻・死亡等家族関係の発生及び変動に関する事項等が記載されます。

  3. また、本人の出生、死亡、改名等の記載について「基本証明書」、父母、配偶者、子どもについての「家族関係証明書」の他、「婚姻関係証明書」「入養関係証明書」「親養子入養関係証明書」の5種類の証明書が発給されます。

2.本人等以外の者に対する登録事項別証明書の発給手続について
  1. 証明書の交付請求ができるのは、本人又は配偶者、直系血族、兄弟姉妹であり、代理人が請求する場合には、次の・〜・の場合を除き、本人等の委任を必要とします(法律第14条1項)。

    • 国又は地方自治団体が職務上の必要により文書で申請する場合
    • 訴訟・非訟・民事執行の各手続において必要な場合
    • 他の法令で本人等に関する証明書を提出するよう要求する場合
    • その他に大法院規則によって定める正当な利害関係のある者が申請する場合
  2. そして、上記(1)・の法第14条第1項第4号にいう「正当な利害関係を有する者」とは、・民法上の法定代理人・債権債務の相続に関して相続人の範囲を確認するために登録事項別証明書の交付が必要な者・その他公益の目的上合理的理由がある者として、大法院例規に定める者をいうとされ(規則19条2項)、その根拠と事由を記載した申請書および正当な利害関係を疎明する資料ならびに申請人の身分証明書の提出を必要とします(同19条3項)。

  3. 更に、大法院家族関係登録例規第12号(2007.12.10決裁)「登録事項別証明書の発給等に関する事務処理指針」第2条3項5号によると、上記(2)・について、債権・債務の相続と関連して、相続人の範囲を確認するために登録事項別証明書が必要な場合には、これを疎明する資料と申請人の身分証明書の添付、上記(2)・について、その他、公益目的上、合理的な理由があると認められる場合には、これを疎明する資料と申請人の身分証明書の添付が、それぞれ必要とされます。

    なお、同指針第4条1項によると、外国人は登録事項別証明書の交付を請求できないとされています。

  4. 弁護士業務で在日韓国人の相続事件処理に特に関係する部分は、上記(3)のとおり同指針第2条3項5号ですが、本人の委任状なしに申請ができるという同指針の解釈について、駐大阪領事館の戸籍担当領事の話によると、現在のところ、債権者が日本法人あるいは日本人で、債務者が在日韓国人の場合には、上記(3)の疎明資料の提示があっても証明書を発給しないというのが大法院の解釈であるとのことであり、解釈の変更が望まれます。





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