- 「農業生物の多様性」の問題
これは、「現在、穀物価格が高騰し、世界の食糧備蓄が歴史的に低いレベルとなって、国際社会は、近代史上、最も深刻な食糧危機に直面しているが、自然のサポートシステムに支えられた穀物・家畜等の農業の生物学的多様性の回復こそが、この食糧問題に対する最善の長期的解決策である」という問題です。
この議題の中で、特に日本にとって関心が高かったのは、バイオ燃料に関し、国際的ルールが必要であるという議論です。
その背景には、トウモロコシ等がバイオ燃料の原料として注目されて投機の対象とされ、価格が高騰してそれを必要とする人の口に入らない問題やトウモロコシ等を栽培する畑を開墾するためにアマゾンの森林が焼き払われる現状等があり、バイオ燃料に関する国際的ルールは、緊急課題として認識されました。
- 「自然保護地域の指定」の問題
陸域については、2009年中に候補地を挙げきって2010年に指定し、海域については2011年までに候補地を挙げきって2012年に指定するというロードマップが確認されました。
しかし、途上国側では保護地域に指定されると開発が出来ない、あるいは、保護する人的物的資源を持たない等の問題があり、具体的な指定作業には、まだまだ困難が伴いそうです。
この資金の問題に関連して、COP9のホスト国であるドイツから、「ライフウェブ(生命網)イニシアチブ」が提案されました。これは、いわば、web上のお見合いシステムで、途上国側が保護したい地域についてweb上でプレゼンをし、それを見た先進国ないし企業等が調査の上、当該地域の保全のための人的物的援助を申し出るという構想で、このシステムの維持には、CO2排出権取引によって得られた資金が当てられる予定です。
この提案は、参加各国の熱烈な支持を得、発表されてからCOP9が閉会するまでの2日足らずの間に、すでに60の締約国が参加を表明したと発表されていました。
- 「遺伝資源へのアクセス及びその利用による利益の公正かつ衡平な分配
(Access and Benefit Sharing、以下「ABS」と言います)」に関するルールづくりの問題
これは、遺伝資源が人類の共有財産であることを前提に、他国による遺伝資源へのアクセスをある程度保証しつつ、遺伝資源の利用による利益が、当該遺伝資源の原産国に分配されるための、国際的枠組み作りの問題です。
これは、例えば、ある地域の固有種である植物の遺伝資源からある病気の特効薬が開発されたが、そのために、開発国がその植物の株を根こそぎ持ち去って、当該地域ではその植物が絶滅して利用できなくなり、かつ、開発された薬が高価過ぎるために、その薬も利用できない、というようなことがないようにしようということです。
これに関しては、COP6(2002年)において、遺伝資源利用時の原産国への連絡と利益の分配に関する指針である「ボン・ガイドライン」が示されています。
しかし、これは法的拘束力を持たないものであるために、ボン・ガイドラインに違反して遺伝資源が開発されたときに原産国の利益を守ることが出来ません。
このABSに関しては、2010年までに国際的な枠組みを作ることになっているのですが、それに法的拘束力を持たせるか否かで、それに否定的な日本、カナダ、ブラジルとそれ以外の国々の間に激しい対立があり、それ以上議論が進まないという感じでした。