会報「SOPHIA」 平成20年05月号より

生物の多様性に関する条約をご存知ですか?
−2010年生物多様性条約COP10が愛知県にやってくる!−


公害対策・環境保全委員会委員 魚住 昭三

生物多様性条約締約国会議COP9が、本年5月19日から30日まで、ドイツのボンにおいて開催され、同会議において、次回COP10を愛知県名古屋市において2010年10月に開催することが決定されました。

予想されるCOP10の開催に備えるべくCOP9開催中の5月22日、名古屋大学名誉教授加藤久和氏に「生物多様性条約COP10を名古屋で開く意味」を講演していただきました。


1 生物の多様性に関する条約とは

生物の多様性に関する条約は1992年にリオ・デ・ジャネイロ(ブラジル)で開催された国連環境開発会議(地球サミット)で採択された条約です。 地球上に存在し分化を続けている様々な種は相互に関係し合って地球環境を支えています。私たち人類は、地球の生態系の中の一員であり、他の多様な生物と共存し、その衣食住に、医薬品に、科学に、いろいろな場面で生物の多様性を利用して暮らしています。しかし、近年、野生生物の種の絶滅は、今までにない速度で進行しています。この条約は、種の生息環境が悪化するなかで、生物の多様性を保全し、持続可能な利用を図ろうとするものです。

この条約は、生物の多様性を「生態系」、「種」、「遺伝子」の3つのレベルで捉え、締約国に対し、その能力に応じ、保全のための措置をとること、持続可能な利用の措置をとることを求めるとともに、各国の自然資源に対する主権を認め、利益を資源提供国と利用国との間で公正かつ衡平に配分するよう求めています(1条)。

2 締結国会議(COP)とは
  1. 日本は1992年に署名し、翌年締約しています。COP9開催時の締約国は190の国と地域です。
  2. 枠組み条約である本条約において、締約国会議は新たな法形成、条約の実施状況の監視、締約国による遵守・履行の確保措置まで含む幅広い機能を有しています。
3 予想されるCOP10の主な議題と論点
  1. 「2010年目標」の達成状況の評価と次期目標の枠組み設定がおこなわれます(条約の戦略計画の改訂)−「2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」(2002年、ハーグCOP6で採択)というのが、これまでの目標でした。

    目標年である2010年には、この達成度が問われることとなります。

  2. 遺伝子資源へのアクセスと利益配分(ABS:Access and Benefit Sharing)に関する国際制度のあり方が議論される予定です。 これまでの議論では、取決めに法的拘束力をもたせるのか、アクセスについても規定するのかなどについて、基本的な対立が残されたままになっています。
  3. 他の地球環境条約との関係

    特に、気候変動枠組み条約および京都議定書との連携・調整が問題となっています。また、バイオテクノロジーや伝統的知識の保護に関してはGATT/WTO体制の下における知的財産権保護制度との調整・両立も問題となっています。

4 地域からの発信

愛知県での誘致開催の意義として誘致構想策定委員会(2008年3月10日)は

  1. 人と自然との関わりの知恵の発信
  2. 自然との関わりの知恵や文化、物作りによる大都市圏の形成
  3. 自然との共生を模索する地域モデルの発信−藤前干潟、海上の森、草の根の里山保全活動
  4. 愛知万博の理念と成果を継承・発展

を提言しています

5  多様性保全の観点から見たわが国の制度の問題点と対応策
  1.  わが国の自然保護地域制度は、生物多様性の保全の観点からは、多くの問題点を抱えています。自然公園法は、風景の保護に重点を置いており、しかも自然公園法と自然環境保全法の重複指定は認められていません。アマミノクロウサギやヤンバルクイナなどの生息地など生物多様性のホットスポットは、みな自然公園外か、規制の緩い地域におかれています。また、多様性にとって貴重な干潟、藻場、珊瑚礁などはほとんどカバーされていません。生物多様性の豊富な里地里山の維持管理の問題にも対応できていません。
  2.  陸域・水域・沿岸域を一体とした生態系保全策の強化を図る必要があり、海中公園や干潟・藻場の位置づけを明確にすること、里地里山の保全の再生のため農政・林野行政との統合が必要です。
  3.  また、種の保護措置の抜本的強化が必要で、国内貴重種の指定拡大、違法採取の監視・取り締まり体制、罰罰則の強化が必要です。地方自治体による生物多様性「地域戦略」の策定、事業に当たっての生物多様性への影響の回避・最小化、予防的・順応的取り組み方法の採用、市民参加の機会と手続き保障を整える必要があります。
  4.  さらには、裁判・裁判外の環境紛争処理制度の改革も必要です。改善されたとはいえ、行政訴訟における原告適格や行政裁量の問題はいまだ残っています。改正行訴法の解釈適用や公益訴訟制度の導入、ADRの活用など、司法による解決の道筋をつけることも必要です。
6 さいごに、

以上、加藤先生に、お話しいただいたとおり、我が国の制度は、生物の多様性を保全する観点からは多くの問題点を抱えています。 幸い、COP10の開催で市民の関心が高まり、行政も基本計画を策定しようとしています。弁護士会としても、いろいろと問題提起をしていくいい機会です。

また、COPは政府間会議ですが、私たち弁護士会もNGOや地方自治体と主にオブザーバーとして発言の機会が与えられます。また、サブセミナーも多数開催されますので、COP10に際しても、会としてシンポやセミナーを開催するなど、世界に共通した視野を持って発言・発信し、その役割を果たしていく必要があると感じました。






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