平成19年11月20日からテロの未然防止の整備の一環という位置づけで入国時に特別永住者、16歳未満の者、外交官を除くほとんどの外国人から指紋(原則両人差指)・顔写真の提供を義務づける制度が始まりました。これに合わせて、成田空港では事前に個人識別情報(指紋)を登録した外国人や日本人のための自動化ゲートも設置されました。現時点では中部国際空港には自動化ゲートは導入されていません。
同制度の運用状況ですが、最初の3週間で71人が上陸拒絶され、うち54人はかつて日本から退去強制された者が、本国で名前が一字違う、あるいは誕生日が一日違うなどの新たなパスポートを取り直して来日しようと試みた者だったそうです。
新聞報道等によれば、同制度の突合せの元になるデータベースは、同制度で採取された生体情報、約1万4000件の国際指名手配情報、約80万人の退去強制者の要注意リストだということです。
このような制度ですので、あなたが前に退去強制(自主的に入管に出頭した場合もこれにあてはまります)になっているのであれば、再入国の時点で過去の違反歴が判明する可能性は低くないと思われます。
まだ制度が始まって間もないところで実務的に固まっているわけではありませんが、旅行や一時帰国で日本から出国前に入管に相談をしておく方が、再入国で空港に着いたときに判明するより望ましいと考えられます。現在日本で夫婦生活を営んでいたり日本に定着したりして在留資格に合致した適正な生活を送っている場合には在留資格の取り消しにはならない場合もありえますし、在留資格の取り消しをされる場合でも最終的には前述の事情があれば在留特別許可が認められる場合も少なくないと思います。
空港で判明した場合には上陸許可か上陸特別許可を求めることになりますが、事前に入管に相談してあればスムーズに処理がなされることになるはずです。
同制度に基づく指紋提供や顔写真撮影を拒んだ場合には、入管の退去命令に従って直ちに本邦外に退去すれば指紋採取や顔写真撮影はされませんが、遅滞なく退去しない場合には強制力を行使した指紋採取(全10指)や写真撮影がされることになります。
なお、こうした個人識別情報の採取については、指紋採取等が人権を侵害していること、国際的に見てテロ対策を理由として同様な制度を採用しているのは米国だけであること、同制度のシステムが米国の会社によって提供されていること、同制度によって採取された個人識別情報が長期間に亘り集積されていくこと等の批判もなされている状況があります。