会報「SOPHIA」 平成20年02月号より

行政職員のみなさん、多数の参加 ありがとうございます!
〜弁護士による行政法律セミナー(全4回)開催される


弁護士業務改革委員会 第3部会(企業行政チーム)部会長
庄 司 俊 哉

1 司法がもっと身近になる司法制度改革

行政法律セミナー

司法制度改革のポイントの一つ「国民の司法参加」において求められている市民像は「社会生活の中で、司法を利用して、生活上の問題点を解決し、さらには司法に参加し、社会をより良くしていこうとする姿勢を身につけている市民」といえよう。弁護士会は、これまでにも裁判員制度広報や法教育などを通じて、国民の司法参加について様々な活動を展開している。

ところが弁護士会は、この司法制度改革の視点からは、行政に対しラヴコールを十分に送ることができて来なかった。「国民」と言った場合、無意識に「行政職員」の人々を除いていたのかもしれない。

こういった反省に立ち、弁護士業務改革委員会第3部会(行政企業部会)は、弁護士の能力を行政に生かしてもらう最初のステップとして、平成18年2月、「弁護士パワーでよりよい行政を!〜自治体行政と弁護士の連携シンポジウム」を開催し、平成18年秋には全3回の弁護士による行政職員向け法律セミナーを開催してきた。

2 弁護士による行政法律セミナー

本年度も弁護士による行政法律セミナー全4回を開催することにした。本年度は愛知県及び名古屋市に参加協力をお願いするだけでなく、セミナーの案内書配布について愛知県市長会のご協力もいただくことができた。

こういったご協力の成果もあり、昨年度の全3回参加者数がのべ423名であったところ、本年度全4回で応募申込数のべ960名、参加者数のべ767名とほぼ倍増した結果となった。

セミナーの立案段階において、「より専門的な内容」(1、2、4回)と「基礎的な内容」(3回)に分類し、参加者のニーズに合致するよう工夫を試みた。

3 セミナーの開催
●第1回目  平成20年1月16日(水)
         午前・午後の計2回開催
「多重債務の解決と過払金回収による各種滞納の解消」・・・講師 瀧 康暢 会員

参加者数合計171名。多重債務の解決により自治体の財政負担が軽減すること、過払金の回収で各種公租公課の繰越滞納を解消し、次年度への納付につながること、あわせて過払金債権の差押えの手順を、自治体及び県税事務所の実例を踏まえ解説がなされた。

本年度は地方自治体が、多重債務者問題に深く関心を持った最初の年でもあるが、瀧会員は、「多重債務者問題の放置」が自治体行政にとっていかに問題が大きいものか、という根本議論から始められた。具体的な問題点として、・地域での一般消費が低く押さえられる、・各種税金、使用料、保育料、給食費の滞納、・高等学校の学費未払いによる退学・休学、・離婚による母子手当の増大、出生率の低下、・自殺による遺族への母子手当、生活保護支給、・生活保護費の増大、・ホームレス増加によるホームレス対策関係予算の増大、・犯罪(窃盗、横領)、児童虐待、DVの増加による自治体の負担増が説明された。これらの説明は、「地域をよりよくしたい!」という行政職員の気持ちに訴えかけるものがあったに違いない。

この講義をきっかけに県内でも先駆的な過払金差押事例が出てくることを期待したい。


●第2回目  平成20年2月5日(火)
         午前・午後の計2回開催
「より適正な自治体行政を目指して〜トラブルの予防から行政訴訟まで」・・・講師 大久保 守博 会員

参加者数227名。建築確認申請と生活保護申請の具体例をもとに、自治体法務、行政手続法、行政訴訟手続を解説し、現実の窓口における対応の問題点を参加者に一緒に検討する講義であった。

この講義の企画趣旨は、「今後、司法制度改革によって司法を身近に感じる市民が多数想定されるところ、行政職員も同様に司法を身近に感じることが必要であろう」という点と、「紛争を事前に予防する重要性を理解いただくこと」であった。

大久保会員は、元香川県職員でもあり、参加者も親近感を持ちながら聴講いただけたと思う。


●第3回目  平成20年2月12日(火)
「基礎から分かる 相続法」・・・講師 庄司 俊哉(執筆者)

参加者数270名。この講義のみ、対象者を担当業務からの特定はせず、基礎的な知識をお伝えするという目的で企画した。法学部以外を卒業した人でも理解ができるよう、パワーポイントを利用しながら、言葉のいいまわしに気をつけ、また基礎的な例題を盛り込んで参加意識をもってもらえるような工夫を行った。


●第4回目  平成20年2月14日(木)
「知っておきたい 学校・教育現場での危機管理」・・・講師 池田 桂子 会員

参加者数99名。最近、学校や学習施設でのトラブルが増えていることから、教育現場でも社会の変化を踏まえた危機管理が問われている。そこで「危機への対応は日頃からの取り組みが重要」という観点から、・不審者等外部への対応、・保護者等からのクレームへの対応、・報道機関への対応などについて、法的な視点から対処法が説明された。

司法制度改革により、学校と子・親との関係にも、司法的な解決手法が持ち込まれることになるであろう。そういった背景も一つの要因として、学校現場では、弁護士のアドバイスへのニーズが高まっていることが企画趣旨であった。

池田会員は愛知県教育委員会委員であることから、教育現場での実情を踏まえた上での、トラブル解決の着眼点・方法の説明がなされた。例えば「不審者侵入により生徒の所有物が盗まれた」事例では、不審者の侵入を許したことと、生徒の所有物が盗まれた問題を分けて考えて、後者については、学校が生徒の所有物を預かったか否かが判断の分かれ目であることが説明された。

4 参加者によるアンケート回答から

アンケートへのコメントとして「このような有意義なセミナーのPRをさらにして下さい。必ず出席させていただきます。」、「弁護士自体遠い存在のような気がありますが、研修・講演会を通じて身近な存在になればと思います」、「個々の自治体との意見交換会などきめ細やかな交流をしたいと期待しています」と積極的評価がほとんどであった。

我々は、こういった弁護士・弁護士会に対する期待に誠実に対応していくこと、これが業務改革においては重要であると感じた。






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