会報「SOPHIA」 平成20年01月号より

子どもの事件の現場から(67)
思わぬ経緯で少年の成長を知りました


会員  景山 智也


1 前に担当した少年のツレが当番弁護で…

昨秋のある日、当番弁護出動のファックスを受け取ると、被疑少年(Y君)の名前に見覚えがありました。すぐに過去の記録を探してみると、Y君は、昨春に担当したD君の友人だと分かりました。罪名は、道交法違反。D君もY君と一緒に、暴走行為にでも参加していないか、との不安が胸をよぎりました。

警察署でY君に面会し、被疑事実を確認すると、集団暴走による共同危険行為でした。さらに、前歴を確認すると、シンナー所持の前歴があるとのことでした。「その時一緒だったD君が鑑別所に入ったときに、D君の付添人についていたんだよ。」と伝えると、親近感が湧いたのか、程なく受任に至りました。「ところで、D君は暴走に参加していないよね。」と確認したところ、参加していなかったので、安心しました。

2 D君とY君の問題点・性格

D君とY君は、中学校時代の同級生。ともに所属した部活の先輩に引きずられる形で、非行を行うという面がありました。彼らが起こした事件には、必ず、中学校の先輩の誰かが関与していました。したがって、交友関係の調整が重要な問題でした。

また、二人とも共通して、他人に流されやすく、善悪の判断が甘く、「このくらい大丈夫。」とその場の雰囲気に流されやすい性格だと自分で認めていました。

他方で、二人とも、雇用先(それぞれ別の職場の内装業)での信頼は厚く、真面目に仕事をしている様子が窺われました。

D君は、中学校の先輩たちとの関係を何とかしないといけない、という問題については、「しばらく先輩たちとは会わない方がいいと思うけど、完全に縁を切りたくない。」という考えでした。「自分がしっかりしていれば、大丈夫。悪いことに誘われても断ります。」というD君に何度も本当に大丈夫か?と確かめましたが、D君の考えは変わりませんでした。不安もありましたが、D君は、保護観察処分で社会に戻っていきました。

3 鑑別所に送られたY君は…

鑑別所に身柄を移されて最初の面会の時Y君は、「悪いことをしようとしたら、Dに、それはやめとけって、止められたことがあります。鑑別所から戻ってきて、Dは悪いことをしなくなりました。自分も鑑別所の中でなんとか立ち直って、今回でこういうことは最後にしたいです。」と言いました。

自分は立ち直りたいんだという、Y君の強い意志を感じて、とても嬉しく感じるとともに、その場の雰囲気に流されやすいと自認していたD君が、Y君に悪いことは悪いと言えるようになっていたと知り、この時はホントに嬉しかったです。このような形で、かつて担当した少年の成長ぶりを知ることができるとは思いませんでした。D君、また悪いことをしたんじゃないかなんて疑ってしまってごめんなさい。

4 D君・Y君の将来、ついでに僕の将来

D君は、Y君らとともに、将来、内装業の会社を興すんだという目標を語ってくれました。そのころも、僕はまだ少年事件をやっていて、「今担当している子、仕事がないから面倒見てくれないか。」と二人にお願いできたらいいなと期待しています。






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