会報「SOPHIA」 平成19年12月号より

ホームレス総合法律相談(H19.12.20)に初参加しました


   委員  榊 原 真 実


クリスマス直前の平成19年12月20日夜、気温約6℃の中行われたホームレス総合法律相談に初参加した。

若宮大通高架下。私は普段その近くのデパート群には立ち寄っても、このエリアについては正直見て見ぬふりをしている。もちろんホームレスの人達と話す機会もない。

少し緊張して現地に赴くと、炊き出しの整理券を求めて長い列ができていた。そこへ高校生や大学生の若者らが到着。カラオケセットで熱唱するホームレスの方もいる。なにやら楽しい雰囲気になってきた。聖霊高校の女子生徒さんたちによる美しい賛美歌披露もあった。

一方、弁護士会設置の法律相談用テントには今回11件の相談があった。

相談内容は、「野宿生活から何とか脱したい」というものや、「研磨の仕事に就いたが、仕事中に手指を怪我した。病院にも連れて行ってもらえずその日にクビになった」というものなどで、生活保護、労災、健康保険関連が多い。いずれも、生きる根源に関わる切実なものばかりだ。

私には「働く意欲はあるが、仕事がない。役所に相談してもこの年齢だと仕事がないと言われる。生活保護も役所をたらいまわしにされて、申請できない」と63歳男性からの相談。生活保護受給よりも、彼は働くことを望んでいる。しかし、「仕事がない」という現実に、答えに詰まってしまった。彼はいろいろな話をしてくれ、最後は「でも、がんばるわ」とご自分で結論を出し、相談終了・・・。

若輩者の私は、法的理論と、「ない」という現実とのギャップに、「法律相談」としてできることの限界も感じた。

しかし、今年で5年目の当相談は、ホームレスの方々にも着実に受け入れられてきており、問題解決にも繋がっているそうだ。

今回は、「肺気腫なので集団生活ができないが、生活保護では施設入所しか認めてもらえない」という相談者に弁護士が区役所へ付添い、生活保護による医療機関への入院が認められたという結果に繋がった。今回以外にも、相談から法的解決に至った例として、生活保護申請の付添い、交通事故損害賠償請求手続きの代理、借金の消滅時効援用通知作成のアドバイスなどがあったという。

相談終了後の反省会兼懇親会では、より相談しやすくするため、スーツをやめたらどうか、相談員と分かりやすいよう腕章を付けたらどうか、等の熱心な意見が出た。

当相談に尽力してきた、生活保護問題部会部会長の森弘典会員に話を聞いた。

―当相談を始めたころのホームレスの方々の反応は。
森:最初のころ一番つらかったのは、「弁護士がふんぞり返っている」と言われたこと。でもその人と1時間くらい話をしたら、「こんなに話を聞いてもらったのは初めてだ。ありがとう」と言われた。ちゃんと分かり合えるところがどこかにある。そういうのを経験しながら、今は行くとみんなが声を掛けてくれるような環境になった。
―「今日会場に来て、やっぱり落ち着くなあと思った」とおっしゃっていましたが・・。
森:大変な生活をしている中でも素朴で純粋な人、素朴が故にうまくいっていない人が多い。みんな大変な生活を送っているが、人間らしいところがあって、心が和むんです。

なるほど、まず、対話をしてお互いを知ることから法的解決への道が始まるのかもしれない。「寒い中だが参加するとなぜかいつもぽかぽかした気持ちになる」との意見も。たしかに私も寒い中参加したにもかかわらず、あまり寒さを感じなかった。もらうものの方が多いと感じた当相談であった。






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