会報「SOPHIA」 平成19年11月号より

法科大学院実務家チューター意見交換会開催される


   会 員  河 村 直 樹


平成19年11月27日、弁護士会館にて愛知県下の法科大学院6校より各1名のチューターを集めて意見交換会が開催された。

意見交換会においては、各校におけるチューターの位置付け、業務内容の報告と併せ、チューターという学生に近い立場から見た学生の学習到達度や法科大学院制度の問題点についてまで活発な意見交換がなされた。

各校におけるチューターの位置付けは、本科外で学生の学習を補助するという位置付けにおいては概ね共通していたが、その具体的業務内容としては、単に相談室に待機して相談を受けるだけとする学校から、チューターがゼミを行う学校まで様々であった。一部、今回の意見交換会に先立ちチューターから資料要求をしたのに対し一チューターが知る必要はないとの回答をするなど、チューターを軽んじているとしか思われない学校もあったようであるが、多くの学校ではチューターは、本科の授業だけでは手の届かない「かゆいところ」をフォローする重要な役割を担う者と位置付けられているようである。

次いで、学生の学習到達度についても各校チューターから現状報告並びに意見報告がなされたが、各校チューターの意見として「学生はがんばって勉強をしているが成果が出ていない」「基本事項が出来ていない」との意見が相次いだ。この点については、そもそも2年ないし3年で旧試験合格+前期修習終了レベルに持って行くカリキュラム自体が無理であり制度自体が原始的に不能ではないかという制度論や、研究者教員の中にかつて教育能力において予備校に敗北した現実を直視できず、教育者として当該科目をムラ無く教えるというのではなく、研究者としての自説に固執する者が依然として少なからず存在する点に問題があるのではないかとの意見も出された。また、学生についても、相当の努力をしているという点についてチューターの意見は一致するものの、反面、基本事項が全く身についていないものが少なからずいるという現状が各校から報告された(例えば、刑法において違法性を検討した後に構成要件該当性を検討するという、凡そ学部生ですらしないようなことを平気でする法科大学院生が少なからず存在するとのことである。また、研修所では修習前の修習予定者に対し「基本書を読みなさい。」という従前では考えられない話がなされたとのことである。)。話は、その原因にも及んだが、先の制度的問題、教員側の問題に加え、新司法試験の回数制限などから無駄に焦ってしまい、条文・定義・趣旨・要件・効果といった基本的事項を身につける地道な努力を惜しむ反面、安易に論点に飛びつき、論証カードの暗記に走ってしまうなど、皮肉なことに法科大学院制度制定にあたって批判された「旧司法試験受験生像」以上に旧司法試験受験生的な法科大学院生が少なからず存在すること等も指摘された。

また、話は、法科大学院関係者が崩壊しつつある法科大学院の現状を頑なに隠して公表しないことの問題や、それをこの場をもって公表することが、学生のためでもあり、また、国民のためでもあるとの意見も出された。

最後に、チューターの待遇であるが、この点についても、旧態依然の大学的対応に問題があることが述べられた。法曹養成のために造られた法科大学院においては、弁護士教員を教授予備軍としての非常勤講師の如く扱い苦行を強いるのではなく、事業者としての弁護士というものをきちんと理解した上で、バックグラウンドの準備時間も含め、適切なフィーを払うべきであるとの意見が多数出されたことを最後に述べて本稿の結びとしたい。






行事案内とおしらせ 意見表明