- 1 まずはねらいから
今年の模擬裁判のねらいは、「子どもたちがわくわく楽しめる模擬裁判」でした。そのために、昨年から導入されたパワーポイントのパワーアップを図り、脚本も、子どもたちにとってイメージしやすく、かつ、分かりやすいものにしようと心がけました。
そして、「今年はぜひ、女性会員を被告人役に!」と考えていました。新進気鋭の女性弁護士の活躍を見て、子どもたちに、よりいっそう弁護士への関心を深めてほしい、そんな願いを込めました。
- 2 女性タレント誕生!
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これらのねらいから生まれたのが、「指輪だけが知っている−疑われた女性タレント楽屋荒らし事件」です。
被告人である女性タレントAは、番組収録前にテレビ局の楽屋で、先輩女優Bから指輪を見せてもらったのですが、番組収録中、その指輪が盗まれてしまいました。翌日、女性タレントAは、別のテレビ局で、その指輪をしていたところ、先輩女優Bに見つけられ、窃盗容疑で逮捕されました。さらに、男性アイドルCが登場し、犯行現場近くで、女性タレントAを目撃したと証言しました。しかし、女性タレントAは、指輪の入手経路につき、テレビ局の小道具室の前に置いてある段ボール箱の中から拾ったのだと弁解し、文字通り、涙ながらに無実を訴えました。…というのが脚本のあらすじです。芸能界やテレビ局という華やかな世界を舞台としながら、いわゆる「盗品の近接所持の理論」と「目撃供述の信用性」をテーマとして、事実認定の題材としてはかなりの本格派に仕上がったと、チーム員一同自負しています。
- 3 そして当日、さらに来年へ…
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4回の練習を経て、本番を迎えました。法曹三者役、被告人・証人役の熱演も素晴らしいものでしたが、それ以上に驚いたのが、子どもたちの真剣さでした。午前の模擬裁判では、子どもたちのメモを取る手は止まりません。午後の評議では、子どもたちが細かい事実まで拾い上げて、それを議論していく姿は、未来の裁判員さながらのものでした。
子供たちの感想も、「今年は窃盗罪1罪の成否のみで簡単だろうと思っていたけれど、議論してみるといろいろ悩まされて、よいシナリオだった」「演技が上手でおもしろかったです。なかなかこういうことは体験できないので、参加できて本当によかったです」「自分が裁判員になった気がして楽しかったです」「意見を交わすことができておもしろかった」等と総じて好評でした。
来年以降も、ぜひこの子どもたちの真剣さに答えられるよう、弁護士も心して取り組まなければと思います。
ちなみに、評議の結果は、7グループ中、有罪2、無罪4、同数1。個人では、評議前は有罪8、無罪43、評議後は有罪18、無罪33でした。