会報「SOPHIA」 平成18年10月号より

第49回日弁連人権擁護大会開催される

   会 員 大 田 清 則

10月6日(金)、北海道釧路市において開催された。前日のシンポジウムが、第1分科会820名余り、第2分科会760名余りの参加を得て、盛況のうちに終了した後を受けて、1319人(午後3時50分現在)が参加して行われた。

議事は、伊藤誠一日弁連副会長による、2005年度下期から2006年度上期にかけての事業活動報告から開始された。この中で、伊藤副会長は、国民投票法案に対する取り組み、教育基本法改正問題に対する取り組み、共謀罪新設問題に対する取り組み、少年法改正問題に対する取り組み、監獄法改正問題に対する取り組み、宇都宮誤認逮捕事件に対する取り組み、取調べの可視化問題に対する取り組み、外国人の出入国・在留管理を強化する動きに対する取り組みなどを報告した。

次に、第1分科会、第2分科会の各シンポジウム報告がなされたが、詳細はシンポジウムに関する報告に譲ることとする。

続いて、特別報告として、監獄法改正と日弁連の取り組み、取調べ可視化問題の現状と課題、教育基本法改正問題について、正念場を迎えた金利引き下げ問題、国選付添人制度及び付添人拡充の現状と課題、第44回人権擁護大会以後における障がいのある人に対する差別を禁止する法律に関する取り組みの成果と今後の日弁連の役割などが報告された。この中では、私自身も関わりを持つ金利引き下げ問題の報告について少し触れておきたい。10月6日の時点では、特例金利問題に加え、利息制限法の金利区分を変更することによる実質的金利引き上げの問題が大きく浮上してきていた。報告にあたった宇都宮健児・日弁連上限金利引き下げ実現本部・本部長代行は、この点の問題性を強く指摘するとともに、自民党の情勢が極めて予断を許さない状況にあることを踏まえ、今後、日弁連としては、国会での集会、日比谷公園で決起集会やデモ行進などを行い、引き続き目的達成に向けて活動するので、協力してほしいと要請した。この問題は、その後上記の活動が効を奏したのか、特例金利廃止、金利区分は変更しないという形で目的が達成されようとしている(10月26日現在)。

特別報告の後、シンポジウムを受けての2つの宣言が採択された。1つは、第1分科会の成果を踏まえての「野生生物との共生のための多様性保全法の制定を求める決議」である。これについては、当会の塩見渉会員が藤前干潟問題を例に挙げて賛成意見を述べた。2つ目は、第2分科会の成果を踏まえての「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人の尊厳に値する生存を求める決議」である。これについては、当会の松本篤周会員が賛成意見を述べた。この中で、松本会員は、以前には、一億総中流社会と言われながら、現在では、逆に、OECDから貧困率の高さで改善を求められるような貧富の差がひどい格差社会になってしまった日本の現状を踏まえ、日本社会の将来のあり方を考えるについて極めて重要な問題であること、その中で弁護士ができることとして生活困窮者支援の問題に取り組むことが重要であることなどを指摘した。私も全く同感である。

最後に、次回開始地として静岡県浜松市に決定したことが報告され、終了した。今回の人権大会は、現代社会の大きな動きの中で弁護士、弁護士会が何をなすべきかを強く考えさせられた大会であった。






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