会報「SOPHIA」 平成18年6月号より

日弁連特別研修会

「公益通報者保護制度〜企業の不祥事をなくし、公正な社会の実現のために!」開催される。

会 員  大 野 秀 司

1 はじめに
 平成18年6月23日(金)午後6時から、愛知県弁護士会館5階ホールにて、山本雄大弁護士による、日弁連特別研修会「公益通報者保護制度」が開かれた。夜の開催であったにもかかわらず、熱心な会員が比較的多数出席していた。また、ビデオでの講義であったが、事前に充実したレジュメが配られており、ライブ会場と変わらない雰囲気であった。

2 公益通報者保護制度の概要
 公益通報者保護制度の目的は、正当な通報者を、これに対する報復措置、例えば、@名誉・信用毀損等による民事・刑事責任の追及、A解雇・不利益取扱、B労働者派遣等契約の解除ないしは取引停止、およびC資料収集に関する窃盗、就業規則違反を理由にする責任追及等から守ることにある。というのは、このような正当な通報者は、従来、一般法理(例えば、解雇権濫用の法理)や判例等によって保護されてきた。しかし、三菱自動車工業のリコール隠しや雪印乳業による輸入肉原産地偽装等の通報・告発による企業不祥事の発覚などにより、一般法理や判例による保護では不十分であるとの認識が広がった。そこで、@労働者が安心して通報できる範囲を明確にし、かつ、一般法理等を含めて、全体の保護水準をばらつきなく引き上げることによって、安全地帯を明確にする、A公益通報を理由とする解雇、不利益処分等の違法性を明確にする、B事業者のコンプライアンスを推進するために、公益通報者保護法が制定された。

3 公益通報者保護法のポイント
 公益通報とは、労働者が、不正の目的でなく、労務提供先またはその役員、従業員等について通報対象事実(個人の生命・身体の保護、消費者利益の保護、環境保全、公正な競争の確保等に規定する罪の犯罪事実等)が生じまたはまさに生じようとしている旨を、所定の通報先に通報することをいう(法2T)。この通報先は、@労務提供先または労務提供先があらかじめ定めた者、A通報対象事実につき処分・勧告等の権限を有する行政機関、およびB通報対象事実の発生またはこれによる被害の拡大防止のために必要であると認められる者である(法2T)。注意すべきは、第1に、労務提供先は、事業者に直接雇用されている場合は雇用主であり、派遣労働者の場合派遣事業先が労務提供者となるなど、その定義が複雑であるため、通報対象事実の発生場所と通報先の関係が分かりにくくなっていること、第2に、労務提供先→行政機関→外部機関の順に、通報者が保護される要件が厳しくなっていることである。(法3)。
 公益通報者の保護の内容としては、公益通報を理由とする解雇の無効、不利益取扱の禁止、労働者派遣契約の解除の無効等がある(法3〜5)。もちろん、同法で保護されなくても、法令や一般法理による保護がある。

4 弁護士の果たす役割の重要性
 弁護士など守秘義務を負っている者への相談の場合、具体的事実を示した相談であっても、相談者の企業に対する労働契約上の秘密保持義務違反にはならない。これに対し、守秘義務を負っていない者への相談の場合、「通報」に該当し、秘密保持義務違反になりうる。弁護士の役割は重要である。私も、ある企業の「通報先」に指定されている。事実関係や事実の真実(相当)性、根拠資料の有無・価値などについて正確に聴取して対応しなければならないと肝に銘じた。




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