会報「SOPHIA」 平成18年3月号より

子どもの事件の現場から(46)

弁護人は取調べに立ち会える「適切な者」にあたらない!?

会 員 間 宮 静 香

 知人から、恐喝していないのに恐喝したと警察に疑われている少年がいるので何とかして欲しいとの連絡があった。早速、母親と少年に事情を聞いたところ、内容は以下のとおりであった。

 友人(A)の家に泊まりに行ったとき、Aと、Aの友人2名(少年とは初対面)と計4名で遊んでいた。すると、少年以外の3人が共謀して恐喝をした。少年は途中から現場に居合わせたが、ビックリして止めることもできず、地理がわからなくて逃げることもできなかった、とのこと。

 既に警察から呼ばれ、2回任意出頭していたが、母親の取調べ立ち会いは警察官が拒否していた。任意同行とは名ばかりの密室での取調べで、「自分は関係ない」と主張する少年に対し、警察官は「逃げなかったからお前も共犯者だ」と頭ごなしに決めつけ、少年の言い分はまったく聞いてもらえない状況であった。

 話を聞いて、ともかく取調べに立ち会いをすることが重要と思い、すぐに警察に電話をし、少年警察活動要綱9条3項「少年の同道した保護者等その他適切と認められる者の立ち会いの下に行うこと」を根拠に、取調の立ち会いを求めた。

 すると、警察の返答は・・・「弁護士は立ち会わせることができる「適切な者」にあたらないから拒否します」

 弁護人が適切な者じゃない?????

 「なぜ、弁護人は適切な者にあたらないのですか?」「そういうきまりですから」という問答を繰り返した後、前回拒否された保護者の立ち会いは認めたので、これ以上やりあっても仕方ないと思い、「では、立ち会いが無理だとしても、取調室のドア近くで待機して、少年にアドバイスを求められたら話ができるような状況にはしてください。あくまでも任意ですので」と一方的に言って電話を切った。

 そして、取調当日。少年と母親に同行して警察へ行き、2人は取調室へ。私は、「ここで待たせてもらいます。」と廊下で待っていた。待っている間に警察官と雑談(実質は廊下で待っている私への嫌み)をする中で「本件は冤罪ですよ」と述べたところ、「一緒に自転車に乗って行動しているし、止めていないんだから当然共犯でしょ」と言われ、また頭の中が?????となった。「いやいや、それは道義的な問題であって、ご存じのとおり、法的には共犯じゃないですよ」と言っておいたが、そのような思いこみを持った警察官と2人きりで密室の中で少年が取り調べられていたのかと思うと、立ち会いの必要性を痛烈に感じた。

 その後、昼の休憩時に、取調べの内容を聞き、それに対する答え方をアドバイスし、任意の取調べであることと、共犯にはあたらないことを少年に再認識させ、午後も延々と廊下で取調べが終了するのを待った。

 当初は「送検の上、家裁送致します」と言っていた警察であったが、結局、少年は不送致となった。

 しかし、仮に今回の事件で、弁護士が外で待っていなかったら?母親の立ち会いが認められなかったら?・・・少年は自分が共犯だという調書を作らされていたかもしれない。そう思うと、背筋がぞっとする。

 みなさんも、一度、取調の立ち会いを求めてはいかがですか?







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