会報「SOPHIA」 平成18年1月号より

人権擁護委員会国際人権部会企画シンポジウム

多文化共生を目指して〜子どもの教育を考える〜

人権擁護委員会国際人権部会 委員   佐竹 靖紀

 1月22日、愛知県弁護士会で、外国人の子どもたちの教育を考えるシンポジウムを人権擁護委員会国際人権部会が企画して行った。
 当日は大盛況で、会場の定員が144名のところ約150名もの参加者が訪れ、この問題に対する関心の高さがうかがわれた。
 このシンポジウムは、日本において外国人学校、民族学校が正規の学校として認められていないことなどから生じる様々な問題点について共通認識を形成し、子どもの教育を受ける権利が十分保障される社会を実現するには何が必要であるのかを議論するとともに、今後のネットワーク作りに役立てたいという趣旨でおこなわれたものである。
 シンポジウムは2部制になっており、第1部は、田中宏龍谷大学教授による基調報告が行われ、その冒頭で、静岡県浜松市のペルー人学校が各種学校としての認可を受けたことを報じるVTRが紹介された。
 外国人の子どものなかには、日本語が上手に話せないために日本の学校になじめず、外国人学校に通う必要がある子どもも多く、そのような子どもは母国語で教育が行われる外国人学校へ通う必要がある。
 ところが、学校としての認可を受けていない外国人学校は、法律上は学習塾と位置づけられているので行政からの援助が受けられず、運営費を賄うために授業料が高額になってしまうという問題がある。
 授業料を支払えない親は子どもを通学させることを断念せざるを得ず、結局、日本の学校へも外国人学校へも通うことができない不修学の子どもが発生してしまうのである。
 先のVTRでは、このような現状を克服するために一人の女性が自治体に働きかけを行った結果、静岡県が認可の基準を緩和し、ペルー人学校を各種学校として認可したという内容が報じられていた。
 この報道を受けて、田中氏は、外国人学校への国と地方自治体の対応、各種学校認可を受けた外国人学校卒業生の大学入学資格の問題、指定寄付金(校舎改築のための寄付金など)に対する免税措置の問題、特定公益増進法人指定の問題、私学振興助成金の問題などを報告され、最後に、教育を受ける権利は国際的には「すべての者」に対して保障されており、日本で適法に滞在していない外国人の子どもに対しても等しく教育を受ける機会が与えられるべきであると締めくくられた。
 第2部は、田中氏のほか、学校法人愛知朝鮮学園理事長の文光喜氏、ELCC国際子供学校のネストール・エル・プノ氏、豊田市教育委員会学校教育課指導主事の大河原弘吏氏、名古屋大学大学院博士課程の岩村ウイリアン雅浩氏、ブラジル人学校協議会会長のパウロ・ガルヴァン氏、名嶋聰郎弁護士をパネリストとして招き、パネルディスカッションがおこなわれた。
 ここでは、外国人学校、民族学校の問題(認可、助成金の問題等)、日本の学校に通う外国人の問題(母語教育、母国文化教育の問題等)について各パネリストがそれぞれの立場から意見を発表した。
 外国人学校の認可の問題と助成金の問題は、学校教育における教育内容決定のあり方とも絡んだ難しい問題を孕んでいると思うが、子どもが教育を受ける権利を保障するという観点からは、子どもの利益に最もウェイトを置いた今回のシンポジウムのような議論がもっと活発に行われる必要があるだろう。







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