会報「SOPHIA」 平成18年1月号より

憲法問題シリーズ第4回

国会議員と語る憲法学習会(PART1)開催される

憲法問題特別委員会
委員 樽 井 直 樹

 憲法問題特別委員会は、1月6日、KKRホテル名古屋において、民主党の古川元久衆議院議員を迎えて憲法学習会を開催した。新年早々にもかかわらず、定員一杯の30名の会員が参加した。

 昨年10月に、自民党が「新憲法草案」を、民主党も「憲法提言」を発表するなど、様々な政党や団体が憲法問題に対する見解や改憲案を公表している。当委員会は、会内での憲法議論を活性化し、市民とともによりよい憲法論議を行っていくために、政党や諸団体から国の最高法規である憲法への考え方を通じ、この国のかたちをどう考えるかを語ってもらおうと連続学習会を企画した。今回の古川議員の学習会はその第1弾である。

 古川議員(愛知2区選出)は、衆議院の憲法調査委員会の理事を務める一方、民主党の憲法調査会事務局長として「憲法提言」の作成にも関わっておられ、民主党において憲法問題を語る最適任者といえる。

 古川議員は「この国のかたちと憲法改正」と題して講演。@日本は人口減少という経験したことのない時代を迎えている、Aグローバル化、ローカル化の進行によって「国民国家」が“上と下への分権”という変容を受けているという時代認識に立って、日本を「誰もが住みたい、訪れたい」と思う魅力ある国−アジアの中のニューヨーク−を目指したいと表明。その上で、現行憲法の担ってきた役割を高く評価した上で、@憲法の形骸化、空洞化を阻止する、A社会の複雑化に適応する、B国民主権を実質化させる方向へと現行憲法を“進化”させると、民主党「憲法提言」の基礎にある考えを説明した。その上で民主党「憲法提言」の柱を、@主権者たる国民の「意思」と社会を律する「ルール」で構成された「未来志向」の憲法を構想する、A統治機構を「官主導から民主導」へ改めることで国民主権が活きるようにする、B国家と社会と個人の協力(「共同の責務」)の総和による「人間の尊厳」の尊重、C「補完性の原理」による分権型国家の実現、D国連の集団安全保障の考え方に基づいた能動的な平和主義として特徴づけた。そして、自民党憲法草案とは、憲法制定権者の考え方(政治家か国民か)、憲法の名宛人は誰か(国民か権力者か)、視点の向き(過去指向か未来志向か)に関して明確に違いがあると説明。民主党としては、国民の中での憲法議論を喚起すると今後の進め方について表明した。

 会員からは、「国連の正当な意思決定に基づく活動に参加する」というのは海外派兵を認めるいうことか、国連中心主義と日米安保体制は矛盾しないかなど安全保障問題について、熱心な質問が相次いだ。古川議員からは、自衛隊の存在を憲法上明確にすることは当然、ただ安全保障問題については議論のたたき台であって、党としての結論が出ているわけではないということであった。

 若干の私見を。質問が安保問題に集中したことに古川議員は苦言を呈しておられた。確かに、民主党の提言は包括的なものであり、古川氏はじめ法律家が参加しているだけに憲法理論の展開もフォローされたものであると思われる。しかし「憲法改正の必要性」の指摘が抽象的なものにとどまり、上記の「共同の責務」「補完性の原理」なども大きな問題をはらんだ概念と思われる。

 当委員会では今後も同種の学習会を企画するので、会員各位の積極的な参加を望みたい。








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