会報「SOPHIA」 平成18年1月号より

長時間・過重労働による健康被害を正す

−過労死研究会・弁護団紹介−

過労死研究会・弁護団 事務局   岩 井 羊 一
 

1 「過労死・過労自殺」とは
 過労死・過労自殺とは、働きすぎにより脳・心臓疾患の病気で死亡したり、うつ病などの精神疾患になり自殺してしまうことをいいます。このようなケースについて、労災の申請を労働基準監督署にしたり、労災と認められないケースについて行政訴訟を起こすこと、勤めていた会社に損害賠償請求をすることなどが「過労死事件」となります。

2 過労死研究会を始めるきっかけ
 当地では、水野幹男弁護士が全国的にも有名で、多数の過労死事件を手がけ過労死弁護団全国連絡会の代表幹事の一人となられています。10年くらい前に、私と同期で、現在は福井に登録替えをした海道宏実弁護士らとともに、水野幹男弁護士のもとで、過労死事件を手がけるようになり、その際に、日常の事件の他に判例を勉強したり、事件の報告をして経験を共有するために、勉強会をしようということになりました。それが「過労死研究会」のはじまりです。

3 過労死研究会の実際
 過労死の事件を手がけたことのある弁護士にお願いして、担当の事件の判決の報告をお願いしたり、報告者を決めて各地の判決を得て検討してきました。
 研究会は、3か月に1回、年に4回くらいと余り多くありません。負担にならないように、それほど回数を開かないことが幸いしてか長続きしています。
 研究会は、平日の午後6時から8時ころまで水野幹男弁護士の事務所で行います。弁護士がレポーターになりますが、過労死家族の会の方、現在裁判をしている方にも参加していただいたり、「愛知はたらく者のいのちと健康を守るセンター」というNPOで過労死事件の遺族の支援など、労働者の健康を守る運動をしている方、社会保険労務士の方などとも一緒に研究会をもっています。このように、単なる法律家の判例研究だけでないところがこの研究会の特徴です。遺族の方には、依頼者と弁護士の関係や、当事者としての事件の見方、感じ方を話していただき、参考になります。事件の見方だけでなく裁判の時間が長くかかること、わかりにくさなどにも話が及び、司法全体を考える上でも考えさせられます。遺族とすれば、夫や家族を仕事で失ったと思っているのに裁判でずいぶん待たされることに不満を感じるようです。
 修習生の方の参加も歓迎です。最近あまり積極的に宣伝をしていませんが、修習生のうちに参加していただき、興味を持っていただき、弁護士になったときには一緒に事件をやってもらえたらと思っています。興味のある方は岩井まで問い合わせください。(もちろん弁護士も歓迎です。)

4 過労死弁護団の活動
 過労死弁護団では、毎年、6月の父の日の前日の土曜日と11月の勤労感謝の日の前後の土曜日に「過労死110番」として、電話の相談活動をしています。ここで相談があったケースについて、後日面談したり、受任して代理人に移行するケースもあります。現在も長時間の労働や、ストレスによって体調を崩したり、死に至る人は相当数いると思われ、特に最近は精神疾患の問題が深刻になっていると感じます。過労死がなくなり、弁護団がなくなることが弁護団の目標なのですが、残念ながら当面、弁護団も過労死研究会も続けて行く必要がありそうです。






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