【特集】アジアの平和と日本国憲法を考える
特集「アジアの平和と日本国憲法を考える」を掲載するにあたって
この特集は、10月1日にテレピアホールで開かれたシンポジウム「アジアの平和と日本国憲法」の記録をまとめたものである。
シンポは、小出宣昭氏((株)中日新聞社常務取締役)、児玉克哉氏(三重大学教授)、愛敬浩二氏(名古屋大学教授)の3名がトークを行い、同トークに基づいて、日本の若者4名がアジア5か国の留学生5名をまじえ、パネルディスカッションを行うという形式で行われた。日本の若者の構成は、社会人が3名(フリーター、学校講師、会社経営者(経済団体役員))と、学生が1名(名大法学部生)であり、いずれも20代前半から30代前半の若者である。留学生の国籍は、中国、台湾、韓国、カンボジア、ウズベキスタンであり、いずれも名古屋大学で法律を学ぶ若き留学生たちである。
同シンポは、日弁連が、11月に鳥取県で開催した第48回人権擁護大会において、憲法改正問題を取り上げたシンポジウムを行ったことに呼応して各地で行われたプレシンポジウムの一環として行われ、主催は、当会のほか、日弁連、中弁連が共催し、途中から三重県弁護士会も共催となって開催されたものである。トークは、三者三様の内容で、どれも実におもしろい内容だった。児玉氏が現実的な防衛政策を構築することの重要性を「排発的」的に指摘したかと思えば、愛敬氏は憲法9条を守ることの今日的意味をわかりやすく語られた。小出氏は、脱亜入欧と大東亜共栄圏の近現代日本のあり方を見つめ直す重要性を平易に語られた。中部を代表する大新聞の常務という立場にありながら、「平和憲法のマインドが否定されるなら私は体を張って闘うだろう」とトークを結ばれた同氏の思いに胸を打たれた聴衆は私だけではないと思う。同シンポでは、若い世代と一緒に憲法問題を語るということを重視した。21世紀を生きる若い世代こそ、憲法改正問題に関心を持ち発言して欲しいと考えたからである。ディスカッションでは、若い世代の率直で新鮮な問題意識が示された。なお、紙数の制約で、トークやディスカッションは、要旨のみの掲載となったことをお断りしておく。
2005年は、憲法改正問題が大きくクローズアップされた一年となった。4月には、衆議院と参議院の各憲法調査会が憲法改正問題に関する意見書を公表し、自民党大勝の衆議院選挙後には自民党は新憲法草案を公表した。その最大の焦点が、恒久平和主義、戦力不保持を定めた憲法前文と憲法9条の改定の是非であることは、言うまでもない。
同時に、2005年はアジア太平洋戦争が終結して60周年の年であり、また、アジアと日本の関係が問われ続けた一年であった。12月にクアラルンプールで東アジア首脳会議が初めて開催され、東アジア共同体が語られるようになった。小泉総理大臣の靖国神社公式参拝は中国、韓国等からの反発を強め、日本外交の孤立が指摘された一年でもあった。このような年に行われた本シンポは時宜にかなうものであったと言えよう。いったい日本はアジアとどのように共存していくのか、日本はどのような役割を果たすべきなのか。その中で、憲法9条を改定することは、どのような意味を持つのか。この特集が、こうした論議を活性化させる一助にでもなればと思う。
なお、憲法問題特別委員会は、2006年も会の内外での憲法論議の活性化をめざし、様々な取り組みを行う予定であり、1月6日の古川元久衆議院議員(民主党)に続き政党や経済団体等との懇談も企画していく。
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