会報「SOPHIA」 平成17年11月号より

関東医療少年院・川越少年刑務所訪問記

子どもの権利特別委員会 委員
 浅 賀   哲
粕 田 陽 子

  1. 訪問記

  2.  平成13年度より、子どもの権利特別委員会では、少年院等の子どもの権利に関わる施設の見学を実施しております。昨年度の関西地区の京都医療少年院、宇治少年院に引き続き、本年度は、去る11月22日に、関東医療少年院と川越少年刑務所を、中弁連の金沢、福井、岐阜の会員にも参加いただき、訪問いたしました。なお、前日は、桐井弘司会員、竹内景子会員の行き届いた設営の下、交流会が立川市内のスペイン料理店で開催され、深夜おそくまで話題が尽きることはありませんでした。

  3. 関東医療少年院

  4.  JR中央線の国分寺駅から、タクシーで約10分走った武蔵野の面影を残す閑静な住宅街に、関東医療少年院はあります。社会適応の妨げとなる疾病の治療等が、矯正教育の重要な領域として認識されたことから、昭和24年に、医療と教育を並行して行う専門施設として、同少年院は設立されております。現在の施設は、昭和40年に全面改装されたままで、京都医療少年院と同様、老朽化の感は、否めませんでした。

     定員は124名であり、男子96名、女子28名のおよそ8対2の割合となっております。入所者の非行事実としては、凶悪犯(放火、強制わいせつ、殺人等・13%)、特別法犯(覚せい剤等・24%)、ぐ犯(自殺未遂等も含む・11%)の割合が他の少年院と比較し、多い点に特色があるといえます。また、疾患別にみると、平成7年度では身体疾患が62%、精神疾患が37%であったのに対し、平成16年度では身体疾患が29%、精神疾患が71%とほぼ逆転して、精神疾患の割合が増加しており、基本的信頼感の欠損がある、処遇困難な入所者が増加しております。

     同少年院では、69名の職員が配置され、医療担当者と教育担当者が協同して一人ひとりの少年に見合った個別的な処遇を実施しているとのことであり、医療としては、身体医療一般(外科、内科、歯科、眼科等)、精神療法・薬物療法、カウンセリング、保健衛生指導、芸術療法の指導がなされております。また、教育としては、基本的生活指導、作業療法、病度別体育、交換日記、IT指導、グループワーク、セラピー犬を用いた指導等がなされております。また、篤志面接員等ボランティアの方の献身的な協力が実施されているとのことであり、例えば、殺人を犯した少年のために、僧侶の面接員が故人法要のために訪問する例もあるとのことです。所内には、少年たちが作った陶磁器、版画等が展示されており、著名な芸術家が指導しているとのことでありました。

     マスコミに注目される事件も多く、職員の研修等については、開かれた研修を心掛けているとのことであり、人材育成に力点をおいているとのことでありました。また、入所している少年たちは、100%と言わないまでも、そのほとんどが性的虐待、レイプ体験、身体的虐待の被害者でもあるとのことでした。そのため、常にケアという側面を忘れてはならないという基本姿勢は、京都医療少年院の指摘とも一致し、重要な点であると改めて考えさせられました。

  5. 川越少年刑務所

  6.  川越少年刑務所は西武新宿線南大塚駅からタクシーで10分ほどの所に位置します。関東医療少年院とは異なり、周囲は畑や工場が点在するのみです。施設の沿革は明治4年に遡りますが、昭和24年少年法施行により少年の収容を開始し、同44年現在地に新施設を建築移転して現在に至っています。

     収容率は、既決者定員1346人に対し1662人と123.5%の過剰収容になっています。舎房は平成15年度の補正予算で増設したものの、6名部屋に8名を収容したり、独居に2名を収容するなど、受刑者にも、それを監督する刑務官にも負担となっているのが明らかでした。

     受刑者の年齢構成は20歳未満1.5%、20〜24歳66.2%、25歳以上32.3%で、見学当日20名の少年が収容されておりました。犯罪別に見ますと、財産犯30%、凶悪犯27.9%、性犯14.2%、粗暴犯13%、薬物犯8%、交通その他6.9%となっており、性犯、粗暴犯、薬物犯の収容が他所に比して多いとのことでした。

     同刑務所の特徴としては、少年受刑者の施設であることの他、総合職業訓練施設に指定されているとおり、17の訓練科目が設置されていること、東京矯正管区の分類センター業務を行っており12名の心理技官がいることが挙げられます。

     少年受刑者の処遇に関しては、成人と分離し、個別担任を付けた上で個別処遇計画を作成して定期的な評価を行い、処遇の充実を図っており、20歳に達した者については職業訓練を受けるよう勧めており、年に一度保護者会も開催しているとのことでした。もっとも、共犯少年が入所した場合には、少年同士を分離する必要から成人との分離の徹底ができないとのことでした。

     施設内にはいくつかの工場があり、クリーニング工場では外部のクリーニング店と契約して衣類等を受け入れていました。自動車整備工場では一般車両の車検や板金塗装も行っているそうです。また、職業訓練を受けた受刑者による理髪店も一般客を受け入れているそうで、自動車整備工場同様、格安で隠れた人気店であるとのことでした。また、見学翌日開催のキャピック展には少年の園芸工場で作られた立派な大根が一本50円という格安の値段で出品されるようでした。いずれも、矯正施設と周辺地域の関係を良好に保つ一端を担っていると感じさせられるものでした。

     分類センター業務は一定範囲の受刑者について精密な入所時調査を行い、その結果を処遇に役立てるものです。センターには箱庭療法ができる設備、マジックミラーを備え付けたグループワークのための部屋等もあり、各種の心理、知能検査を行うことができます。原則的には集団生活が基本であるとしながらも、心理技官による面接やSSTの活用等により引きこもり等の処遇困難者に対応しているとのことでした。

     出所者は約80%が親族の下へ戻り、7%が更生保護施設に入所しており、若年であることから引受良好とのことでした。

     少年院の保護処分とは異なり、刑事処分であることや物的人的な制約を感じつつも、収容が長期にわたるので年齢及び成長に応じた指導が可能であるという点を利用して、少年あるいは若年受刑者の更生に資する教育をしようとする姿勢が随所にうかがえました。






行事案内とおしらせ 意見表明