会報「SOPHIA」 平成17年11月号より

日本の住宅の安全性は確保されたか −阪神・淡路大震災10年後の検証−
−第3分科会シンポジウム

会 員 伊 藤 陽 児
 

 「夢のマイホーム」が一瞬にして家族の命を奪う「凶器」になる。これを私たちにまざまざと見せつけたのが、1995年1月17日午前5時46分に発生した阪神・淡路大震災であった。死者6433名のうち、死因が明らかな方の実に約76%が、窒息・圧死、つまり建物等の下敷きになったことが原因で亡くなったとされる。

  大震災をきっかけに、住宅の安全性に対する社会的な関心が高まり、日弁連も翌年に消費者問題対策委員会内に土地住宅部会を新設して積極的な取組みが行われてきた。この10年間で立法・行政・司法も、欠陥住宅被害の予防や救済に向けて確実に前進している。

  しかし、今もなお現実に欠陥住宅は生み出され続けている。その背景には現在の建築生産システムとそれに関連する諸制度の抱える構造的な問題がある。

  本シンポジウムでは、私たちの住宅の安全性を確保するために何をすべきかをテーマに、建築士制度の改革、行政による確認検査制度の改善と徹底、既存不適格住宅の解消に向けた法整備の拡充、司法による被害救済のあり方等につき、真摯に議論が行われた。

  「安全な住宅に居住する権利」が、人間にとって文化的で最低限の生活を営むために必要不可欠な基本的人権であること、そして、これを獲得するための努力をこれからも続ける必要があることを改めて確認できた充実した内容であった。






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