会報「SOPHIA」 平成17年8月号より

どう変わった受刑者処遇法、どう変わる未決者拘禁法
刑事処遇に関する特別委員会

委員長 田 原 裕 之

監獄法が変わる

1908年(明治41年)に制定された現行監獄法。「本法ハ陸海軍ニ属スル監獄ニ之ヲ適用セス」という条文(第10条)すら残っています。
  この監獄法が制定約100年を経て、全面改正の途上にあります。
  ベテラン会員は、昭和57年に始まった「拘禁二法反対運動」の記憶があると思います。私もこの年に弁護士登録し、以後、この問題に関わってきました。政府提出にかかる「刑事施設法案」「留置施設法案」と日弁連の「刑事処遇法案」の対置の中で、日弁連の悲願であった監獄法改正は容易に実現しませんでした。
  この膠着状態を突破する転機となったのが、平成14年に発覚したいわゆる「名古屋刑務所事件」でした。以後、法務省、日弁連は精力的な努力を続け、この5月、「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」が成立しました。
  今回の改正で切り離された代用監獄や未決者拘禁制度や死刑確定者処遇については、平成18年通常国会提出に向けて「未決拘禁法」制定作業が進んでいます。

 

弁護士と監獄法

「監獄における人権はその国の人権水準のバロメーター」という言葉があります。「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を使命とする私たち弁護士として、監獄の問題には関心を持つべきでしょう。
  また、刑事弁護に携わる弁護士として、担当した被告人が実刑判決を受けてどのような処遇を受けているのかは気になるところです。その者が再犯に至らずに社会生活を送ることができれば、その者にとっても幸せであり、第二の被害者を出さないことにもなります。この意味で、弁護士は「塀の中」について関心を持たざるを得ないと思います。
  さらに、未決者拘禁法については、刑事弁護そのものと関わってきます。新立法において、代用監獄はどうなるのか、拘置所での執務時間外接見は認められるのか、電話接見・ファックス通信が認められないか、死刑確定者の面会は自由になるのか、こうした論点について、現在、日弁連は法務省、警察庁と厳しい交渉を進めています。そして、この問題は、現在進行している刑事司法改革とも関連しており、日弁連は、未決拘禁者法に続いて、刑訴法の改正を提起することも検討しております。

 

平成18年通常国会には未決拘禁法提出

時間はありません。本年中、遅くとも来年2月ころまでには未決拘禁法の概要が固まっていくと思われます。
  「拘禁二法反対運動」を体験してきたベテラン会員の方も、「拘禁二法って何のこと?」「警察の留置場の方が便利でいいんじゃない」という若手会員の方も、この特集を通して、受刑者処遇がどう変わるのか、未決者拘禁法がどう変わろうとしているのかを知っていただきたいと思います。
  そして、この特集が、未決者拘禁法をどう変えるべきなのかを考えていただきたく契機となれば幸いです。
(なお、「自由と正義」8月号、9月号にも特集があります。興味を持たれた方は、是非お読み下さい。)

 







行事案内とおしらせ 意見表明