会報「SOPHIA」 平成17年8月号より


子ども裁判所、開廷!

〜愛弁サマースクール版 ティーンコート〜

法教育特別委員会
委員 竹 内 景 子

1 「子ども裁判所」とは?

 日本では、非行を犯した少年の処分は、大人だけで構成される少年審判で決定されていますが、米テキサス州などでは、少年と同世 代の子どもたちが手続きに参加して処分を決定する「ティーンコート」と呼ばれる裁判が行われています。そのティーンコートを参考に企 画したのが「子ども裁判所」です。子どもたちが、それぞれ、弁護人、検察官、裁判官を務め、彼の立ち直りのためにどうしたらよいかを 自由な発想で考える「少年のための少年による裁判」、それが「子ども裁判所」なのです。


2 子ども裁判を受けた少年

 今回裁判を受けた少年は、本屋で本を万引きした高校3年生のA少年です。非行事実は認めているものの、今回の事件をあまり深く 考えていない17歳の高校生役を、午前は桐井弘司弁護士、午後は堀江亮介弁護士が務めました。実年齢との差を感じさせない、迫真の「ゆるい」演技が、子どもたちの真剣さを引き出したことは、想像に難くありません。


3 裁判の準備

 子どもたちには、A少年について、最低限の情報しか与えていませんでした。家庭や学校での様子、非行に至る経緯やその原因、事 件後の状況等、A少年の更生のために必要なのは厳しい処分なのか寛大な処分なのかを判断するために必要な情報は、子どもたちが それぞれの立場から行うA少年の尋問で明らかにしなければなりません。弁護人と検察官に許された裁判前の事情聴取の段階から発揮された子どもたちの想像力には、サポート役の弁護士も内心驚きました。


4 「ただ今より子ども裁判を開廷します」

 裁判の進行役は、裁判官役の子どもたちが、厳粛に務めてくれました。シナリオの全くない少年への尋問も、企画者たちの不安は杞 憂に終わり、いろいろな角度から鋭い質問が展開されました。少年役の弁護士は、想定問答だけでは足りず、自分の子ども時代のこと も思い出さなければ、答えられなかったのではないでしょうか。尋問を踏まえた論告弁論もしっかりしたものでした。


5 果たして、少年の処分は?

 「当裁判所が決定した処分は、次の通りです。@万引きをした本屋で1ヶ月働く(被害者に謝罪の気持ちを示すとともにお金の大切さを知るため)、A万引きを半ば命令したB君以外にも友達を作りB君と距離を置くこと(友人関係を考えるため)、B親子で福祉施設でボラン ティア活動をする(人と接する奉仕活動をする中で疎遠になっていた親子関係を密にするため)・・・以上です。」これは、裁判官チームの一つが出した処分です。傍聴していた大人たちは、決定された処分の内容が一つずつ明らかにされる度に感嘆の声をあげずにはいられませんでした。


6 企画を担当して

 お陰様で、子どもたちからは概ね好評をいただくことができました。参加型の企画としては成功だったと自負していますが、もう一歩進んで、私たちが子どもたちに伝えたかったことは何だったのか、この企画の到達点を検証してみたいと思っています。
 裁判に参加した子どもたちは、各役割による立場の違いはあっても、同世代の非行を犯した少年に対して、我が身を振り返りつつ温かい目を注いでいました。企画者の方が、忘れていた大切なことを子どもたちから教えられたような気がします。






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