会報「SOPHIA」 平成17年7月号より

【特集】司法改革のゆくえ(2)裁判員裁判と公判前整理手続
<法曹三者裁判員模擬裁判>


法曹三者裁判員模擬裁判とは?

会報編集委員会

〈法曹三者裁判員模擬裁判とは?〉
 本年3月末頃より全国各地の地方裁判所主催で「法曹三者裁判員模擬裁判」が行われています。この模擬裁判は、法曹三者が、裁判員制度における審理・評議や公判前整理手続を実体験することにより、問題点や今後の検討事項などを把握し、三者間の共通理解を得るために行われているものです。いわば、実務家による、実務家のための模擬裁判で、国民に対する広報は目的とされておらず、一般公開もされていません。
 当地においても、名古屋地方裁判所主催の「法曹三者裁判員模擬裁判」が去る6月から7月にかけて開催されました。

〈事案の概要〉
 
当地の模擬裁判では、妻が夫を殺害したという殺人被告事件が題材とされました。
 
起訴状記載の公訴事実の概要は、以下のとおりでした。
 
Aは、平成10年3月1日午前零時ころ、…A方において、Aの夫であるV(当時40年)に対し、殺意をもって、果物ナイフ(刃体の長さ約11.4cm)をその胸部等に向けて多数回振り下ろすなどした上、同果物ナイフでその右前胸部を1回突き刺し、よって、そのころ、同所において、同人を心臓刺創による心タンポナーデにより死亡させたもの
 これに対し、被告人A・弁護人の主張は、概ね以下のとおりで、Aに殺意はなく、殺人の実行行為も行っていないというものでした。「犯行日、犯行時刻ころ、犯行場所において、AがVともみ合っていたこと、その際Aが果物ナイフを所持しており、そのナイフによってVの右前胸部の刺創が形成されたこと、以上の事実は認める。
 しかし、AはVを脅そうとして果物ナイフを所持していただけで、VがAからナイフを取り上げようとし、Aが取り上げられまいと抵抗してもみ合っているうちに、図らずもナイフがVの右前胸部に刺さってしまったにすぎない。」

〈模擬裁判の配役〉
 模擬裁判では、裁判官役は名古屋地方裁判所刑事第2部の判事・判事補3名が、検察官役は名古屋地方検察庁の検事3名が、弁護人役は当会の弁護士3名(舟橋直昭、稲垣高志、福井秀剛各会員)がそれぞれ務め、裁判員役は、3庁の職員が務めました。なお、被告人役は当会の湯原裕子会員が、その情状証人役は当会の村山智子会員が務めました。

〈模擬裁判手続の概要〉
 模擬裁判は、次の日程で開催されました。

@公判前整理手続 6月9日午後5時〜
 検察官からの証明予定事実の提示、請求証拠等の開示(刑訴法316条の13)、弁護人からの類型証拠の開示請求(同条の15)、予定主張明示と証拠調請求(同条の17)など

A公判審理 6月30日午前9時30分〜午後5時過ぎ
 プレゼンテーション・ソフトを利用した冒頭陳述、論告・弁論、マネキン人形を利用した証人尋問など

B評議 7月1日午前9時30分〜午後5時過ぎ
 結論:殺人罪認定。懲役7年(求刑12年)







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