会報「SOPHIA」 平成17年7月号より

「法科大学院−その光と影」を聞いて

会員 山田幸彦

 7月23日、日本民主法律家協会(日民協)名古屋支部総会が開かれ、名古屋大学和田肇教授が標題のテーマで記念講演をされた。和田教授は、02年から05年3月まで執行部(評議員)の立場にあり、同大学の法科大学院開設に直接関与された。
 同教授は、国民にとって利用しやすく、正義が実現される司法が望ましい司法制度であるが、我が国はまだその点で不十分であり、法曹についても質・量両面での充実が必要であるという基本認識に立っておられる。
 しかし、法科大学院については、開設後約1年を経過して、光よりも影の方が大きいのが実情だという。その最大の原因は、74大学定員6000人超という「乱立」である。当初は全国で20〜30校と言われていたが、大学の思惑と文科省の方針転換によりこのような事態になった。このことは、法科大学院に様々な歪みを生じさせている。
 まず、教育の内容、質への影響である。学生は、明確な目的意識を持って一生懸命勉強しているが、合格率(30%)のプレッシャーから司法試験に合格することが最優先となっている。教員も、合格率を意識して、受験対策的な面倒見に走らざるを得ない。このため、質のよい予備校化しており、問題発見・解決型の教育機関になっていないという。名古屋大学でも、アジア諸国との連携を生かして、中国法、ベトナム法等の特色ある科目を開設しているが、学生の関心は低い。受験に有利か不利かが選択の基準になっているのは、どの大学でも見られる現象だという。
 3000人にこだわらずに7、8割合格できるようにしたらどうかという意見もあるが、教員の間では、率直に言って学生の内の4割位は法曹としての適性に疑問があるとの見方が有力であり、現状を前提とする限り否定的に考えざるを得ないとのことである。今後、司法試験に合格できなかった法科大学院修了者の受け皿をどうしていくかについて、真剣に考えなければならないと指摘された。
 「あそこがつくる以上うちでも」という具合でかなりの大学が無理をして開設したため、全体として教員不足が顕在化している。とくに一定の科目(民訴法、刑事法等)では深刻であり、申請過程での不祥事や仁義なき争奪戦(具体例の話もあったが、省略する)も起こっている。一応スタッフがそろっていても、法科大学院の教員は相当の体力・気力が必要だが、高齢の大家を担ぎ出したり、判検事定年退官者などの高齢者教員が目立つところも少なくなく、文科省から改善要望の付いているところが相当数あるという。
 法科大学院は、大学にとってかなりの持ち出しであり、このような厳しい現状を前にして、数年先にはいくつかの大学が「静かに」撤退していくだろうと言われている。
 このように、法科大学院は決して順調ではないが、よい法曹が育つ制度に改善していかなければならない。名古屋でも、各大学が競いあうばかりでなく、今後は教育の充実のために協力する必要があるとまとめられた。
 私が会長のとき、申入れを受けて大学と協議を開始したが、その中で「連合」法科大学院を提唱したことがある。大学の思惑が優先して実現に至らなかったが、何よりも大切なことは和田教授が言われたようによい法曹が育つ制度にすることである。顕在化した問題を大学と法曹が率直に議論し、改善に向けて取り組んでいかなければならないと感じた。







行事案内とおしらせ 意見表明