会報「SOPHIA」 平成17年6月号より

犯罪被害者のあっせん・仲裁センターの利用


犯罪被害者支援特別委員会 対話チーム長
 青 木 恭 美

 「事件の内容を知りたい」「加害者から謝罪を受けたい」という犯罪被害者の要望は重要であるにもかかわらず、現行の訴訟制度の下での実現は困難と言わざるをえません。
 当委員会では、訴訟や調停の枠に入りきらない被害者のニーズに応える場の一つとしてあっせん・仲裁センターがふさわしいと考え、この1年、あっせん・仲裁センター運営特別委員会との間で協議を行ってきました。今後、犯罪被害事案に関わる方が積極的にあっせん・仲裁センターを利用し、犯罪被害者の支援に役立てていただければと思い、この協議の結果についてご報告する次第です。

1.相手方の呼出に資する情報・事案についての情報の収集
 犯罪被害事案か否かを問わず、申立時に、書面を交付して申立人の手続進行に関する意向をうかがう。あっせん・仲裁人が架電等の方法により申立人本人あるいは代理人から事情をお聞きすることもあり得る。
 相手方の出席が期待できず、両当事者を同じテーブルにつかせることが最大の課題となるケースもあります。そこで、事件の内容や申立の理由、相手方呼出に資する情報を入手したうえで呼出を行うものです。

2.待合室
 犯罪被害事案については、フロアをかえて双方の待合室を準備する(少なくとも被害者側には個室を用意する)、あるいはフロアをかえて待合室を確保できる日に期日を入れる等の配慮をする。
 少なくとも初期の段階では、なるべく加害者側と顔を合わせたくないと感じる被害者もいます。出頭時や交代時に顔を合わせたり、双方の話し声が聞こえたりすることがないよう配慮していただけることとなりましたが、設備上の制約もあり、必ずしもご希望に添えない場合があります。

3.あっせん成立の説明
 加害者申立事案及び代理人が付いていない事案については、あっせん・仲裁人より、民事上の和解が加害者にとって有利な量刑事情となることを説明する。
 和解を成立させることの刑事手続上の意味を理解しないまま、被害者があっせん・仲裁手続を進めてしまう可能性があることに配慮したものです。

4.手数料

(1)申立手数料
 申立人が経済的事情により負担することができない場合や10万円以下の少額申立の場合等には減免可能。

(2)成立手数料
 当事者の経済的理由により負担することができない場合や経済的利益が名目額で、現実には回収困難な事情が認められる場合等には減免可能。
 あっせん・仲裁手数料規則運用基準に基づき、犯罪被害事案か否かにかかわらず従来も同様の扱いがされていました。経済的事情の判断については法律扶助の受給基準に準じてなされます。成立手数料の額や負担方法は、当事者の意見をふまえ、一括支払か分割支払か、分割期間の長短、支払義務者の支払能力などを総合的に考慮して決定されます。実際に、一時金を基準に算定した事案、減額のうえ被害者負担とした事案、加害者負担とした事案等があります。

5.仲裁人の選出について
 犯罪被害事案担当のあっせん・仲裁人をあらかじめリストアップする。
 これまでの実績に基づきリストアップし、犯罪被害事案についてはその中からあっせん・仲裁人を選出することになります。