会報「SOPHIA」 平成17年5月号より

知的障害者・高齢者の消費者被害を考える


消費者問題対策特別委員会
委員 伊 藤 勤 也

 今年5月、埼玉県富士見市で、認知症の姉妹が悪徳リフォーム業者に騙されて、約5000万もの消費者被害に遭うという報道がされました。これほどひどい例は多くないにしても、判断能力の十分でない高齢者や知的障害者が悪徳業者による消費者被害に遭っていることは多くの弁護士が経験していることではないでしょうか。これに対して、各弁護士はどのように対処しているのでしょうか。消費者被害事案ととらえず、破産申立てによる清算をアドバイスしていないでしょうか。そんな問題意識から、この問題に関係するであろう高齢者・障害者総合支援センター(アイズ)及び消費者問題対策特別委員会に加え研修委員会の協力も得て、標記の研修会を行いました。

 今、ホットな話題ではありましたが、土曜日の午後という日程設定もあってか30数名の参加に留まり少し残念でした。しかし中身は充実したものとなり、参加した会員は、大いに得るものがあったのではないでしょうか。

 当初は、白梅学園短期大学の堀江まゆみ教授の講演と名古屋市の消費生活相談担当者からの事例報告を予定していたのですが、堀江先生から、共同研究者との共同報告の形にしたいとの申し出があって、筑波大学講師の名川勝先生、豊田市で障害者の生活支援ワーカーを務めている手島雅史氏が急きょ報告に加っていただけることになりました。

 まず初めに名古屋市消費生活センターの相談係に勤務している伊東真氏より、90歳女性の耐震補強金具取付被害事例、82歳女性の活水装置取付被害事例、33歳男性精神障害者のふとん次々販売被害事例という3事例について紹介がありました。

 この中で、第3の事例について詳しく説明があり、布団と整水器を多数購入して300万円近くの債務を負ったもので、消費生活センターが間に入って解除を申し入れたが話し合いが平行線をたどったというもので、このような場合に、弁護士会とのスムーズな連携の必要性を感じるという話でした。

 堀江先生は、厚生労働省厚生科学研究の主任研究員としての実績もあり、知的障害者の消費生活支援について行ってきた研究成果に基づいて、知的障害者の消費行動や陥りやすい被害、あるいは地域社会で知的障害者が生活していく上で、どのような援助が必要なのか等について話されました。

 知的障害のある人は、他者との対話の経験に乏しく、被害に遭いやすいとともに、「話し相手」になってくれたという満足感で被害の認識がない場合があるというのが一つの特徴となっています。

 また援助する際も障害者が過度に依存的にならないよう、本人の自立を進めながらの援助が必要だという視点も示されました。

 そして、障害者の日常生活を支援する生活支援ワーカーの立場にも触れ、年齢が若く経験が少ない者が多いため、専門家との連携を強く望んでいるという実態も紹介されました。

 次に手島氏が生活支援ワーカーの仕事内容、苦労などを時にユーモアを交えながら報告されました。私も今回初めて支援ワーカーという仕事の存在を知り、その大変さと知的障害者にとっての重要さを理解しました。

 最後に、名川先生が短時間で今後の課題について問題提起され、私たち弁護士も、今後、今回報告された専門家と連携しながら、知的障害者・高齢者の権利保護・救済を図っていかなければならないと考えさせられた研修会でした。